有能なリーダーやマネジャーはなぜ、人を動かせるのか?

 先日、ラグビー日本代表チームの元キャプテン、廣瀬俊朗氏のお話を伺う機会があった。そのときには、以前は世界の強豪たちにまるで歯が立たなかった日本代表チームの体質を変え、2015年のワールドカップで初めて決勝トーナメント出場を果たすまでの物語を聞くことができた。

 廣瀬氏は、それを映像と彼自身の具体的な体験を交えながら、とてもていねいに詳しく話してくれた。こんなにもわかりやすい話ができるアスリートは、他にはいないだろうと思わせるほどだった。しかも、満面の笑顔で話す様子は、自信にあふれ、説得力があった。

どんなポジションにあっても影響力を持ち続けるには?『ここぞというとき人を動かす力を手に入れる 影響力の秘密50』 スティーブン・ピアス 著 服部真琴 訳 CCCメディアハウス 264p 1500円(税別)

 廣瀬氏は2012年、当時のヘッドコーチ(監督)だったエディ・ジョーンズ氏にキャプテンに抜擢されて以来、日本のラグビーを世界に通用するレベルまで引き上げるのに貢献してきた。

 ところが彼は、ラグビーの技術では残念ながら他のメンバーより劣っていた。そのため「スタメンを保証できない選手にキャプテンは任せられない」との理由で、2014年にキャプテンの任を解かれてしまった。

 彼は結局、その後一度もベンチ入りは果たせなかった。しかし、精神的支柱としてチームを支え続けた。「陰のキャプテン」と呼ばれるようにもなり、見事にチームを初のW杯決勝トーナメント進出へと導いたのだ。

 フィールドに立つ機会が少なくなることで存在感をなくすアスリートは少なくない。それでも、廣瀬氏のように、どんなポジションにあってもリーダーシップを発揮し続けられる人はいったい何が違うのだろうか。

 廣瀬氏のようなリーダーは、「人を魅了し、考え方や行動を変えてしまう不思議な力」を持っているようだ。本書『影響力の秘密50』のテーマである「影響力」とは、このような力を指すのだろう。「影響力」は、いわばリーダーシップを発揮したり、マネジメントを行うための基礎体力のようなもの。「影響力」が弱ければ、どんなにスキルの高いリーダーやマネジャーも、そのスキルを存分に生かすのは難しいだろう。