昨年11月、オーストラリアで発生した大規模洪水の被害は、いまなお深い爪痕を残している。同国の炭鉱に権益を持つ日本商社にも懸念が広がっている。

 英豪合弁の資源大手、BHPビリトンが1月20日、10~12月期の原料炭生産量が前期比3割減となることを明らかにする一方、オーストラリアに900万トンの権益を持つ三井物産は「最終的な被害は不明」とした。今年度の予想生産量800万トンの大半を同国で見込む伊藤忠商事も「下期決算への影響を精査中」だという。別の商社関係者は「1~3月期決算への影響は避けられない」とこぼす。

 だが、3000万トン近い権益を持つ日本商社の最大の被害者、三菱商事の反応は異なる。同社関係者は「洪水が想定内だったのは不幸中の幸い」と胸をなで下ろした。同社が洪水発生前の昨年11月の上期決算発表時に「サイクロンによる豪州資源の生産減の可能性」を理由に、下期の業績予想ですでに550億円もの損失を織り込んでいたためだ。

 この予想には外部から「保守的過ぎる」との声も上がった。同社関係者は「同国は2008年も大洪水が起きた。同国気象庁の情報などから大規模な洪水がほぼ100%起きると判断したが、勇気のいる予想だった」と明かす。

 石炭輸入量の6割を同国に依存する日本にとってその洪水リスクは大きい。もっとも新たな調達先として期待されるモンゴルの炭鉱開発には、三井物産が中国、米国企業と、伊藤忠ら4商社がロシア、韓国企業と共同応札する方針だが、事前審査期限が理由もなく一方的に1月24日から31日へ再延期され、こちらも怪しい雲行きだ。しばらくは“降らぬ先の傘”とはいかないようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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