「山の中のS字カーブもハイグリップタイヤと遜色無く軽快な切り返しで走れた。走り終わってかなりタイヤを消耗したと思ったが、見てみると磨耗はほとんど進んでない」と驚くライダー。ダンロップの低燃費タイヤを自慢のバイクに履いてツーリングした感想だ。

 住友ゴム工業(ダンロップ)は低燃費タイヤシリーズ「エナセーブ」から新しく125cc以上のバイク向けタイヤ「スポーツマックス」を発売した。自動車用低燃費タイヤは各メーカーがこぞって新商品を投入し競争が激しくなっているが、バイク向けでは同社が世界初だ。

 低燃費タイヤとはその名のとおり、通常のものに比べ燃費が2~3%向上するタイヤのこと。転がり抵抗(タイヤ走行時に地面と接する抵抗。弱めると燃費は増すが安全性に難が生じる)とウェットグリップ(濡れた地面でも一定のグリップ力を保つ力)という、一見相反する二つの能力が最適化できるよう商品化した。

 加えてバイクには「走りを楽しむ」という側面が大きい。低燃費ながら操縦性にも優れていなければライダーには受け入れられない。

 スポーツマックスの開発には基礎研究からじつに3年が費やされた。

 タイヤの表面を縦方向に3分割し、原材料のカーボンやシリカを最適配合することで、接地面の大きい中央部分に転がり性能を、バイクを左右に寝かせた際に接地する両端部分にグリップ性能を持たせた。中央部分の内部には、熱で溶けにくい天然ゴムも重ねている。

 また、タイヤ表面の細かな溝もバイクに最適な角度を新設計した。発売の直前まで何度も走行テストを繰り返した結果、時速60km走行時は2.2%、時速100kmでは3.4%燃費が向上するタイヤに仕上がった。

 そもそも趣味性の高いバイク、しかもタイヤにおいて、低燃費やエコを謳った商品は売れるのか、「社内でも意見が分かれた」(山崎一雄・モーターサイクルタイヤ部課長)という。だが、日本自動車工業会が行なったバイクユーザーに対する意識調査では「想定以上に燃費や環境を気にする傾向が見られたため、発売に踏み切った」(同)。

 背景にはライダーの高齢化もある。いまや40~50代がメイン層となっている。