勃起不全(ED)治療薬バイアグラなどの偽造品がインターネットなどを介して国内外に氾濫している。正規のED治療薬を国内で製造・販売する4社の合同調査では、ネット経由で入手した「治療薬」の4割がニセモノだった。ネット経由以外に、知人から受け取ったり、海外で入手したりした「治療薬」を服用して健康被害に遭ったケースもあるといい、専門家らは「ED治療薬は医療機関を受診して正規ルートで入手してほしい」と注意を呼び掛けている。(フリーライター 兼松昭夫)

EDの潜在患者は1130万人規模
治療薬、正規ルートで入手は9%

ED薬のニセモノがネット販売で横行する理由日本では40歳以上の男性の過半数が何らかの原因でEDになっているとされる(写真はイメージです)

 ニセ治療薬による健康被害が止まらない。

 財務省の調べでは、日本の税関で輸入を差し止められたニセ治療薬は2015年には1030件に上った。これは10年前(11件)の約100倍に当たる。錠数ベースでは12年の約39万錠から、翌13年は約4.3万錠といったん大幅に減少したが、15年には約8.8万錠と、前年(約4.4万錠)のほぼ倍に跳ね上がった。これらの大半がED治療薬のニセモノだという。

 日本では現在、40歳以上の男性の過半数が何らかの原因でEDになっているとされる。潜在的な患者数は、軽症な人を除いても1130万人規模に上るといわれ、ED治療薬へのニーズは高い。しかし、昭和大藤が丘病院の佐々木春明副院長によると、医療機関を受診してED治療薬を入手するのはこれらの9%ほどにすぎない。

 ニセ治療薬がはびこる背景の一つにはインターネットの普及がある。正規のED治療薬を国内で製造・販売するファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリーの4社は11月24日、今年3~8月にかけて実施した合同調査の結果を発表した。

「バイアグラ」のほか、日本国内で承認されている正規のED治療薬(先発薬)「レビトラ」「シアリス」の販売をうたう「個人輸入代行業者」の日本人向けサイトから3品目のサンプルを入手して鑑定すると、国内からの発注分では45サンプルのうち16(35.6%)が、タイ発注分では25サンプルのうち12(48.0%)がニセモノだと分かった。