先週は、“財政再建=消費税増税”ではなく、“財政再建=増税+増収+歳出削減”が正しいことを説明しました。今週はその延長で、増税には“良い増税”と“悪い増税”の二種類があることを説明したいと思います。

“悪い増税”

 菅政権のやり方を見ていると、とにかく財政赤字が大変だ、国債発行が多過ぎだ、将来の社会保障支出が大変だ、と消費税増税が不可避であることを煽っている感があります。

 確かに、将来的な社会保障負担を考えると、消費税増税はどこかのタイミングで必要です。しかし、増税のタイミングを間違えたら、それは“悪い増税”となってしまいかねません。

 それでは、“悪い増税”とは何でしょうか。経済成長に悪影響を及ぼしてしまい、結果として、雇用を減らすなど国民生活に支障を生じるのみならず、税収も思ったほど増えない結果となる増税のことです。

 その典型例は、1997年(平成9年)の消費税増税です。ご記憶の方も多いと思いますが、当時の橋本政権は消費税率を3%から5%に引き上げました。その際、社会保険料負担の増額や所得税特別減税の廃止なども同時に行なわれたため、合計で9兆円程度の国民負担増となりました。

 その結果はどうだったでしょうか。翌年以降、経済成長率は大幅に低下しました。そして何より、税収も大きく落ち込んでしまい、1998年から現在に至るまで、一般会計税収が1997年水準を回復した年はありません。消費税収は増加したものの、景気の悪化に伴い所得税や法人税収が落ち込んだために、このような事態が起きているのです。財務省のホームページで公開されている資料(下図参照)がそれを如実に物語っています。

 1997年というと、すでに日本経済はデフレに陥っていた年です。それにもかかわらず、デフレは放置したままで消費税4%弱分の国民負担を増やした結果が、この長期にわたる税収の低迷ではないでしょうか。