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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

「落第」判定もあり!相模原市の市民団体が始めた
評価なき政治の世界を変える「議員通信簿」の衝撃

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第20回】 2011年2月7日
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 「定年退職するまで(神奈川県に住み東京で働く)“神奈川都民”でしたので、市政や市議会には疎かった。それでも議員はりっぱな人達なんだろうなと思っていました」

 こう語るのは、神奈川県相模原市の赤倉昭男さん。市議会の傍聴を続けている市民団体「相模原市議会をよくする会」の代表だ。議員一人ひとりの議会内外での活動ぶりをチェックし、傍聴者の市民から見た評価を「議員通信簿」として公表している。実名入りの成績発表とあって、52人いる相模原市議にとってはどうにも煙たい存在となっている。

 赤倉さんが議会傍聴にのめり込んだきっかけは、新聞の小さな告知欄だった。3人の主婦が「一緒に市議会を傍聴しませんか」と呼び掛けていた。1999年の春のこと。定年退職して3年、自治会長を務めていた赤倉さんは行政や議会がおかしいと感じ始めていた。

 新聞で知った議会傍聴ツアーに加わり、議場に足を踏み入れた赤倉さんは、目の前の光景に腰を抜かすほど驚いた。開会中にもかかわらず、勝手に席を離れる人や私語をやめない人、我関せずと内職に励む人や居眠りどころか熟睡する人までもいた。議論の中身以前の醜態だった。議員の実態に呆れ返った赤倉さんは「すぐに通信簿を作ろうと思い立った」と、当時を振り返る。

 そもそも、評価のない世界に進歩はありえない。自律的に生きられる立派な人間などそうはいないからだ。人間は普通、どうしても安きに流れてしまうものだ。誰かのチェックや評価を受けるからこそ、曲がり易い背筋もそのつど伸びる。怠けず、初心を忘れずに努力を続けるには、他人の視線に晒されることが必要だ。

 議員も例外ではない。議員は確かに市民から選ばれた存在(選良)だが、いわば市民の代理人・代弁者である。選んだ市民がその仕事ぶりをチェックするのは、当然のこと。もちろん、評価を下す最大の場は選挙である。働きが悪いと判断されれば、その議員は落選となる。しかし、現実には議員個々の働きぶりが不透明で、判断材料はきわめて乏しい。どんな議員活動を行っているのか、判然としていないのが実態だ。たった一人しかいない首長と大勢いる議員との最大の違いがここにある。   

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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