死後に生前の意思を実現できる終活支援サービスを充実させる地方自治体が増えている。なぜ自治体が手掛けるのか、またどこまで拡充するのか。特集『ひとり終活大全』(全24回)の#10は、2021年度末の「終活登録」が500件を超えた神奈川県横須賀市など、暗中模索する先進の自治体の事例から探る。(ライター 船木春仁)
深夜に救急車で病院へ、高齢おひとりさまでも
「わたしの終活登録」証で入院治療ができた
神奈川県横須賀市終活支援センターの担当者宛てに、90歳の男性からはがきが届いたのは2021年2月のことだった。
深夜に救急車で病院に運ばれたが、「家族はいない」と告げると、看護師から「入院は難しいかもしれない」と言われた。しかし、横須賀市の「わたしの終活登録」証を示すと、「これで大丈夫!」と言われて入院治療ができたという。
終活登録の生みの親である北見万幸・横須賀市終活支援センター福祉専門官が語る。
「まさに、これが私たちの願いでした。一人一人の個人情報は自治体だからこそお預かりできる。そこには緊急連絡先も記され、『市に終活情報を登録していること』を“担保”に、近隣に身寄りのない方でもさまざまな支援サービスを受けられるのです」
地方自治体による終活支援の先駆けとされるのが横須賀市の「エンディングプラン・サポート(ES)事業」と「終活情報登録伝達(終活登録)事業」だ。ES事業は15年度から、終活登録は18年度から始まった。
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