10歳で「明石市をやさしい街にする」と決めたという、前明石市長の泉房穂氏。3期12年にわたる任期において、前例のない子育て改革を打ち出し続けたその功績は「明石モデル」と呼ばれ、全国から注目されてきた。徹底して既得権益に抗い、市民のための政治を貫き続けた泉房穂氏の信念とは。本稿は、泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
地方自治体のトップは
やる気になればなんでもできる
「トップがやる気になればできる。できないのはトップのやる気がないから」
ツイッターなどで私がよく記す言葉です。この言葉には「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」という意味と、「明石市にできることは国でもできる」という2つの意味があります。
「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」は、文字通りの意味として理解していただいて構いません。明石市程度のことは、やろうと思えばどこでもできる。ただ、市町村ごとに置かれた状況が違う以上、同じことをしたから同じ効果が得られるとは限りませんし、真っ先に取り組むべきこともそれぞれに異なってくるはずです。
明石市はベッドタウンなので、子どもに特化した政策が非常に効果的でしたが、過疎化が進む市町村であれば、推進すべきは子育て支援よりも産業振興や移住支援事業などのほうです。
一方の「明石市にできることは国でもできる」には、こういった意味があります。
かつて、国と地方自治体ではトップの権限に制度上の違いがありました。地方自治は首長制ですから、アメリカの大統領のようにトップは強力な権限を持っています。市長は人事権と予算編成権を持っています。場合によっては「専決処分」を用いて議会の議決を経ることなく、やるべきことを実行することもできます。