政治の世界においては、地方や地方自治体よりも国が一番エラいという「お上意識」が依然として変わらない。「明石モデル」で地方政治を成功に導いた前明石市長の泉房穂氏によれば、「市民が中心でなければいつまでも政治は変わらない」と語る。既得権益を否定し、徹底して市民のために動き続けた政治家が、地方政治を斬る。本稿は、泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

地方よりも国のほうが上?
根強く残る「お上意識」

泉房穂Photo:JIJI

 平成に入ってから、国に集中している権限や財源を地方自治体に移していこうとする地方分権改革が内閣府主導で進められています。この改革は国と地方を上下・主従の関係から対等・協力の関係に変えていくことをめざしたものですが、両者の間にはまだまだ大きな格差が存在しています。

 自治体ごとに、人口や経済力は異なるので、その状況に応じた国からの財政支援が必要です。しかしその対応が不十分な上、各自治体の意見が国に反映されないケースもあり、国と地方自治体の関係性において平等性が確保されているとは言い難い状況です。

 かつては、国が一番上で、その次に都道府県、その下が市町村で一番下に来るのが市民という考え方が一般的でした。これが俗に言う「お上意識」と呼ばれるものです。残念ながら、日本独特のこの考え方は今なお一部の国民の間に色濃く残っています。

 幼いころから社会の冷たさを感じてきた私が考える理想の関係性は図Aのようなものです。

図表:社会と市民の関係同書より転載 拡大画像表示

 社会と市民の関係を上下で見るのではなく、円のように見ていくのです。

 一番真ん中にいるのは市民。そしてそのもっとも近くにいるのが市町村、その外に都道府県、すべてを包み込む形で存在しているのが国という関係性です。このような円の関係性で市民と市町村、そして国の関係を考えていくと、市民の一番身近にいるのが市町村となります。