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医療・介護 大転換

要介護者への行き過ぎた自立支援は虐待と変わらない

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第67回】 2016年12月7日
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介護の目的は「自立支援」だけなのか?

 介護保険制度で、利用者の要介護度が軽くなると特別の奨励金を交付する自治体が増えてきた。「成果主義報酬」の導入である。同様の試みを国が新たな制度として導入しようとしている。

 要介護度が重くなれば報酬引き下げも検討され出した。介護保険法で謳われる「自立支援」に役立っているかどうかを報酬と結びつけようという狙いだ。

 だが、要介護度の上がり、下がりは介護サービスの良し悪しだけに起因するものだろうか。対象は、障害を抱え老衰が日々確実に進む老人である。長期的にみれば必ず要介護度は下がる。

 果たして、介護サービスによる「成果」とは何のことだろう。介護の目的は、「自立支援」だけで評価されるべきものだろうか。そもそも、介護は医療や教育と同様に税金が投入された社会の基礎的サービスである。「成果」を競うべきものなのか。

 多くの疑問が湧き出てくる。首をかしげざるを得ない。まず、国の動きを振り返ってみる。

 安倍首相は11月10に開かれた第2回「未来投資会議(議長・首相)」で、介護報酬を自立支援の効果を反映した体系に転換するよう厚労省や関係省庁に指示した。

 リハビリで利用者の要介護度が改善した場合や、人工知能(AI)など先端技術を導入して介護の質を高めたら通常の報酬に加算を付ける。重度の要介護者を減らすことで、高齢化で膨張が続く介護費の抑制を図る考えだ。

 未来投資会議は、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を活用して成長戦略を検討しようと、経済財政再生本部の下に設置された。この日は、医療介護分野をテーマに据え、「予防・健康管理」と「自立支援」を新戦略として打ち出した。

 首相は「介護が要らない状態までの回復を目指す。パラダイムシフトを起こす」「これからの介護は自立支援に軸足を置く。介護報酬などの改革に向け、直ちに施策を具体化してほしい」と述べ、制度設計を急ぐよう求めた。

 会議参加者からは「今の介護現場は、入浴や食事のケアが中心で自立支援を目指していない」「技術革新による介護の質の向上を後押しすべきだ」という意見が出された。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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