絶滅寸前の国産はだか麦、技術と工夫で現代に蘇る雨が少なく、大きな河川もない香川県は米作りより麦などの栽培が盛んだった

 はだか麦という食べ物をご存じだろか。恥ずかしながら筆者も知らなかったのだが、はだか麦は大麦の一種で、手で揉めば簡単に外皮がはがれることからその名前がついた。

 11月から12月に種を撒き、5月のなかばには収穫できる大麦の栽培は鎌倉時代以降の二毛作の普及とともに広まった。製粉する必要がある小麦と違い、比較的簡単に食べることができる大麦は、米を補う主食として日本人の暮らしを長く支えていた。

絶滅寸前の国産はだか麦、技術と工夫で現代に蘇る讃岐はだか麦本舗、店主の高畑実代子氏

 やがて「貧乏人は麦を食え」の時代も終わり、状況は大きく変わっていった。1950年の時点で2万3200ヘクタールあったはだか麦の作付面積は1970年には1万1500ヘクタールに、1990年には2820ヘクタールという具合に減少していく。日本人の生活が豊かになり、二毛作が経済的にあわなくなったためだ。

「子どもの頃に見ていた麦畑の景色を残したい」

 香川県にある高畑精麦のブランド「讃岐はだか麦本舗」店主の高畑実代子さんは、そんな思いからはだか麦のPRと普及事業に取り組んでいる。

ボソボソしない麦ごはん
米にはない独特の甘み

 香川県=うどん=小麦と連想されるが、はだか麦の生産も盛んな地域だ。都道府県別で見ると愛媛県に次いで全国2位、3位の大分県を加えた3県で、全国の生産量の9割を占める。