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HIV/エイズに最も差別的な職場は「医療・福祉」!?

木原洋美 [医療ジャーナリスト]
2016年12月8日
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日本ではまだまだ馴染みがないHIV陽性者に対して、無知から生じる職場での誤解や差別は少なくない。ところが、HIV陽性者の勤務先業種の割合が最も高く、医学的な知識も熟知しているはずの「医療・福祉」の現場が「最も差別が激しい」と言われている。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

「知識はあっても怖い」
医療現場の本音

 1995年春、米国・西海岸にある有名大学病院に搬送されてきた患者を見た瞬間、Y医師は「あっ」と小さな声をあげた。

 黒人であり、明らかにホームレスだった。

 転倒したのだろう。血を流し、泣いているが、目はうつろだ。

(この患者はエイズかもしれない)――とっさに浮かんだのは、そのことだった。

 当時、Y医師は日本から留学したばかり。送迎会の酒席で「エイズをうつされるなよ」と冗談めかして笑っていた友人たちの声がよみがえり、手足が凍りついたように動けない。

(怖い、触りたくない)躊躇していると、上司のF医師がやってきた。

 彼は患者に素早く歩み寄ると「大丈夫、心配いらないからね」と優しく語りかけ、おでこに軽くキスをした。

 「衝撃でした。僕だって、エイズが簡単にうつる病気でないことぐらいは知っていました。でも怖かった。得体が知れないというか、エイズ患者を診たことがなかったし、同性愛者や麻薬中毒患者の病気という偏見もあったからです。そう感じていたのは僕だけではなかったでしょう。でも、先生は違った。決して差別せず、治療を最優先していました。この人は信じられると思ったと同時に、あんなふうに行動できなかった自分を深く恥じました」(Y医師)

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木原洋美 [医療ジャーナリスト]

きはら・ひろみ/宮城県石巻市の漁村で生まれ、岩手県の山村で幼少期を過ごし、宮城県の穀倉地帯で少女時代を送る。明治学院大学在学中にコピーライターとして働き始め、20代後半で独立してフリーランスに。西武セゾングループ、松坂屋、東京電力、全労済、エーザイ等々、ファッション、流通、環境保全から医療まで、幅広い分野のPRに関わる。2000年以降は軸足を医療分野にシフト。「常に問題意識と当事者感覚を大切に取材し、よ~く咀嚼した自分の言葉で伝え、現場と患者の架け橋になる」をモットーに、「ドクターズガイド」(時事通信社)「週刊現代 日本が誇るトップドクターが明かす(シリーズ)」(講談社)「ダイヤモンドQ」(ダイヤモンド社)「JQR Medical」(インテグラル)等で、企画・取材・執筆を深く、楽しく手掛けてきた。2012年、あたらす株式会社設立(代表取締役)。2014年、一般社団法人 森のマルシェ設立(代表理事)。森のマルシェでは、「木を遣うことが森を守ります」の理念を掲げ、国産材の樽で仕込む日本ワインやバルサミコ酢の開発等、国産材の需要を開拓する事業に取り組んでいる。


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