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アマゾンのレジなしスーパーが
担うリアル店舗戦略の凄み

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第416回】 2016年12月13日
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「アマゾンGo」の紹介ビデオより。客が商品を手に取ると、購入リストに記録され、戻すと削除される(https://www.youtube.com/watch?v=NrmMk1Myrxc)

 レジのない食品スーパー。アマゾンが、またもやびっくりのコンセプトを発表した。

 この「アマゾンGo」というストアーは、客がスマホをかざして入口を入ると、あとは好きなものを商品棚から選び出し、それを手持ちのバッグなどに入れてそのまま店を出て行けばいいというもの。

 支払いはアマゾンのアカウントから自動的に課金され、スマートフォンに領収書が送信される。買物をカゴに入れる手間、レジに並ぶ時間、レジで支払いをする細かさ、そして買ったものを袋詰めする面倒臭さ、そのすべてが不要だと、アマゾンのビデオが伝えている。

 アマゾンGoのお目見えは、いくつもの意味で驚きだ。もちろん、上述した店のしくみもあるが、アマゾンがまたリアルな店舗を建てようとしていることがわかり、その計画が今度は食品スーパーだったということが初めて明らかになった。

 このビデオが公開されてから、一体こんなことは可能なのかという論説がいろいろなところで繰り広げられている。アマゾンは、ビデオの中でコンピュータ・ビジョン、センサーの組み合わせ、深層学習などを駆使すると伝えている。だが、それ以上の説明はない。

 まずは、このアマゾンのパテント申請ドキュメントが興味深い(次のページに図を掲載)。これは倉庫でのピック作業のためのテクノロジー・パテントだが、アマゾンGoの元になっているものではないかと言われている。図を見ると、棚の回りにはカメラやマイクロフォン、センサーなどが多数取り付けられており、これがこれでピックされたことやピックされた品を認識できるというものらしい。

常識破りの発想で商品管理

 専門家らの想定によると、アマゾンGoの店内では、入口のスマートフォンのタップやカメラで個人を特定し、音で客の場所を認識し、カメラが商品をつかんだか、また戻したかといったことを特定、棚にも重量を量るセンサーや赤外線がつけられていて商品が取り出されるとそれを認識するなど、さまざまな方法で客個人と買物行動を認識、確認するようだ。

 個人の特定には、肌のトーンで棚付近に何本も手があっても個人を見分けることが可能という。深層学習が、あらゆる局面で学習を重ねるので、買い物客の行動パターンも学んでだんだん間違いが少なくなるのだろう。

 これまで、こうしたレジなし店舗の構想では、RFIDタグを個々の商品に付けて、それを受信機が読み取るというシナリオが主流だった。タグの価格も下がってきて実現可能性が高まっていたのだが、取り付ける手間がばかにならないのに加え、価格がまだ十分に下がりきれていない。対してアマゾンのアプローチは、まったく別の発想によるものだ。

 ただ、アマゾンGoのような店は技術的には確かに可能だが、これを100%間違いなく実現するのは難しいという意見が大半だ。現在アマゾンは自社の社員だけにシアトルの店舗を利用させており、ここで何度も実験と検証を繰り返すのだろう。しかし、来年には一般客も迎えるというから、それほど悠長な計画でもなさそうだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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