ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

急速に進む社会保障・税番号の導入議論
このままでは失敗したグリーン・カードの二の舞に

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第2回】 2011年2月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

具体的な中身の議論が進まず

 社会保障と税に活用する番号制度(以下、共通番号制度)の議論が進んでいる。政府は、本年4月に「社会保障・税番号要綱(仮称)」の策定、6月に「社会保障・税番号大綱(仮称)」の策定、秋以降に法案を提出し、2014年6月に付番、15年1月からの導入、というスケジュールを公表している。つまり、あと2ヵ月で、骨子となる法案要綱が出来上がるということである。

 共通番号の導入には、行政の効率化だけでなく、納税者の立場に立ったいろいろな税制の導入が可能となるので、プライバシーの問題にきちんと対応することを前提に、筆者は賛成である。番号制度の導入により、正確な所得の捕捉を行い、その基礎の上に社会保障制度を構築することは、近代国家として当然のことである。

 しかし、あと2ヵ月で法律案要項が公表されるという段取りの中で、国民にとって最も関心が高い、税務への番号の活用についての、具体的な中身の議論が進んでおらず、それが気がかりだ。

 これから述べるように、かつて、グリーン・カードという名称で、本人確認のための番号制度を導入する法案が成立しながらも、国民の不安を招き、最終的には廃案となった経験がある。政府は、その苦い経験から、税務に活用する番号制度の議論に、必要な教訓を学びとらなければならない。

グリーン・カードの挫折

 関係者のトラウマとなっているグリーン・カードの悪夢とは、どんなものであろうか。

 大平内閣の下で検討されてきた一般消費税(仮称)は、議論が生煮えであったこともあり、昭和54(1979)年に遊説先で撤回。その後は「増税なき財政再建」路線を歩むことになるが、不公平税制の代表格とされた利子と配当所得については、総合課税を目指すこととなった。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧