具体的な中身の議論が進まず
社会保障と税に活用する番号制度(以下、共通番号制度)の議論が進んでいる。政府は、本年4月に「社会保障・税番号要綱(仮称)」の策定、6月に「社会保障・税番号大綱(仮称)」の策定、秋以降に法案を提出し、2014年6月に付番、15年1月からの導入、というスケジュールを公表している。つまり、あと2ヵ月で、骨子となる法案要綱が出来上がるということである。
共通番号の導入には、行政の効率化だけでなく、納税者の立場に立ったいろいろな税制の導入が可能となるので、プライバシーの問題にきちんと対応することを前提に、筆者は賛成である。番号制度の導入により、正確な所得の捕捉を行い、その基礎の上に社会保障制度を構築することは、近代国家として当然のことである。
しかし、あと2ヵ月で法律案要項が公表されるという段取りの中で、国民にとって最も関心が高い、税務への番号の活用についての、具体的な中身の議論が進んでおらず、それが気がかりだ。
これから述べるように、かつて、グリーン・カードという名称で、本人確認のための番号制度を導入する法案が成立しながらも、国民の不安を招き、最終的には廃案となった経験がある。政府は、その苦い経験から、税務に活用する番号制度の議論に、必要な教訓を学びとらなければならない。
グリーン・カードの挫折
関係者のトラウマとなっているグリーン・カードの悪夢とは、どんなものであろうか。
大平内閣の下で検討されてきた一般消費税(仮称)は、議論が生煮えであったこともあり、昭和54(1979)年に遊説先で撤回。その後は「増税なき財政再建」路線を歩むことになるが、不公平税制の代表格とされた利子と配当所得については、総合課税を目指すこととなった。