「仕事を大量にこなす、的確にさばくのが得意な人」は、本当の意味で優先順位がつけられていないことが多いと指摘する柴田さん

毎日大量の業務を的確にさばき、部門の目標は必ず達成して、上司の期待に応える。部下には強力なリーダーシップを発揮し、調整もぬかりない。そんな誰もが"優秀"と認める社員が、実は日本企業の弱体化に加担している――。『「できる人」が会社を滅ぼす』(PHP研究所)の著者の柴田昌治さんに、危険な「できる人」の兆候や、そこからの脱皮方法を聞いた。(聞き手/ライター 奥田由意)

ワナに陥りやすい
できる人の特徴

――「できる人」と評されている人の仕事の仕方が、実は会社をどんどん弱体化させている、と指摘されています。

 やるべき仕事が目の前にあったとして、まず何を考えますか。

――「この仕事をどうやるか」でしょうか。どのようなスケジュールで、どういう進め方にするか、誰と協力するか、といったような。

 実はそれが会社を滅ぼす物事への向き合い方なのですよ(笑)。

――えっ、そうなんですか!それはなぜなのでしょうか。

 なぜなのかは後でお話するとして、会社に貢献するどころか、イノベーションを阻害したり、会社の弱体化に加担してしまうワナに陥りがちな、「できる人」の特徴をいくつか挙げましょう。

 (1)仕事を的確にさばくのが得意で、大量の仕事をこなす
 (2)目の前の仕事で、人よりも高い実績を上げている
 (3)決断が速く、自分が決めた方向へ部下をぐいぐい引っ張っていける
 (4)上司の期待するような結果をいつも出そうとしてきた
 (5)会社から与えられた自部門の数値目標は必ず達成してきた
 (6)ある部門のエキスパートである
 (7)不具合やさまざまな問題が起こったとき、丸く収める調整能力がある