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日本に巣食う「学歴病」の正体

「自分は優秀だ」と思い込む戦力外社員の病理

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第17回】 2016年5月10日
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社内の労働市場で認められないのに
「自分は優秀だ」と思い込む人たち

仕事で認められていないのに「自分は優秀だ」と思い込む会社員たちの病理とは、どんなものか?

連載第16回で、社内や社外の労働市場で認められていない高学歴の社員は、はるか以前に手に入れた高い学歴などに固執する傾向があると書いた。筆者の観察では、こうした人たちは冷静を装っていても、底知れぬ劣等感を抱き、威信や名誉、プライドが傷つくことを恐れている。10代のときの受験勉強の成功体験が、意識から消えないからだろう。

 そんな人たちが社会に出て、労働市場の競争で負けた以上、コンプレックスを持つのはある程度は仕方がないと思う。若い社員からも軽く見られるのだから、劣等感を持つのが当然なのだ。だが、その歪みがあまりにひどくなると「学歴病」になりかねない。

 今回は、「社内労働市場で認められていない人」について考えたい。同世代の中で昇格が遅れたり、所属部署の長などから人事評価で低い扱いを受けたり、人事異動のときに引き取る部署がなく不本意な異動をさせられたりする社員のことである。

 社内労働市場と対照的なのが、社外労働市場である。たとえば、新卒・中途採用試験を受けると、何らかの結果が突きつけられる。人材として認められているか否かが、本人にもある程度はわかる。それに対して、日本企業で働く場合、社内労働市場で行われる評価の詳細はなかなか本人にわからない。たとえば社内で自分が人事異動の対象になるとき、その背景や経緯などを詳しく伝えられることは少ない。

 言い換えると、こうした環境では自分を省みることができない、勘違いした社員が生まれやすい。この中には、仕事ができないにもかかわらず、高い賃金を受け取り、40~50代になっても過去の栄光にしがみつく人もいる。そのような人が生まれる背景を探りたい。


 自分にも何らかの原因があったりして、社内労働市場で認められていないにもかかわらず、「自分は優秀だ」と思い込んでいるフシのある人はいるものだ。そんな人の例を挙げよう。

 2013年、労働組合ユニオンに40代半ばの男性が相談に現れた。人事部の部長から、会社を辞めるように言われているという。会社(金融機関、正社員1200人ほど)の業績はリストラをするほど悪いものではないようだ。それでも退職を勧められる。そこでユニオンに来たという。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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