顧客データの流出をはじめとして、大量の機密情報が一瞬で流出する新たな脅威「メガリーク」が続発。深刻な被害が広がっている。

 大量の機密情報が一瞬で流出する新たな脅威「メガリーク」。インターネットと情報機器の発達で、企業の内部からかつてない大規模な情報の流出が相次ぎ、深刻な被害が広がっている。

 誰が、何の目的で、情報を流出させるのか。東京都内でインターネットビジネスを展開するベンチャー企業を訪ねた。去年、46万人にのぼる会員の個人情報が一気に流出。信用を失い取引が次々に停止されるなど、損害は2億円近くに上った。

情報流出の犯人は?
モラルダウンが生む脅威

 流出が発覚したきっかけは、去年9月、会員から寄せられた1件のメールだった。怪しい勧誘電話がかかってきたので、早急に調査をしてほしいという内容だった。会員からの苦情は増え続け、内容も次第にエスカレートしていった。いったい誰が流出させたのか。

メガリークの被害にあったベンチャー企業が、複数の名簿業者から回収した顧客リスト。すべての買取に1000万円近くかかったという。

 手掛かりは出回っていた会員リストの中にあった。会社は複数の名簿業者から、1000万円近くかけてすべてのリストを回収。一緒に買い取ったCD-ROMの中に、消し忘れたと見られる作成者の名前があった。20代の派遣社員の男性の名前だった。急成長したこの会社では、人手不足の中で、派遣社員にも重要な業務を任せ、会員リストにアクセスできるパスワードを与えていたのだ。派遣社員は、会社が問いただそうとした直前、連絡が取れなくなった。

 会社では、半年近くたったいまも会員からの苦情が続いている。対応に追われ、心労を理由に10人の社員が辞めた。社長はこう言って唇を震わせた。

「言葉に表せない言いようのない怒りとか、悔しさとか、無念さがこみあげてきている」

 派遣社員はなぜ情報を流出させたのか。追跡チームは姿を消した派遣社員の足取りを追った。関係者に尋ねて連絡先を突き止め、何度も交渉した末に会うことになった。

 男性は、流出の動機について「その頃、車検代や生活費など、金が必要でした。それで、会員情報を売ることを思いつきました」と語った。男性によると、会員情報は、家で仕事をするために無断でUSBメモリーにコピーし、持ち出したものだった。インターネットで調べてみると、情報を買ってくれる名簿業者はすぐに見つかったという。

「会社にばれることはないと思い、およそ50万円で売りました」

「情報を持ち出すのも売るのも、クリック1つでできました。あまりに簡単でした」

 情報技術の進化と、モラルの低下がもたらす「メガリーク」。その脅威は、さらに深刻な事態を引き起こしている。