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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

3つの「習近平色」一層の強化が滲んだ総書記新年挨拶

加藤嘉一
【第93回】 2017年1月17日
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習近平総書記による
恒例の祝賀の挨拶

 習近平総書記が毎年恒例の新年の祝賀の挨拶を行った。今回も中国共産党の権力の中枢を象徴する中南海でその模様が撮影されたが、過去3年は習総書記自らの仕事部屋とされる場所で座って挨拶をしたのに対して、今回は広くて奥行きのあるロビーのような場所で、立ったまま挨拶をした。

 この変化が何を意味するのかは、少なくとも現段階では私には分からない。

 本稿では、中国語で約1250字におよぶ習総書記の新年の挨拶をレビューしつつ(2016年度版は約1250字、2015年度版は約1370字、2014年度版は約750字)、口にされた内容から解読できる、あるいは私自身が解読すべきだと考える部分を抽出し、過去の挨拶との比較を含めて、若干の分析を加えていきたい。

 挨拶の映像を眺めつつ、活字を追いつつ、その挨拶から私が最も印象深く感じたのは、習近平総書記の政治観、および同氏率いる今期政権の色が比較的濃厚ににじみ出ていたことである。ケースとして3点引用してみたい。

 その3点とは、「反腐敗闘争」、「貧困撲滅」、「国際的発言権・影響力の拡大」である。

 「我々は、全面的に厳しく党を治めることを積極的に推進してきた。"トラを叩きハエ"(筆者注:"トラ"とは往々にして副省長・中央次官級以上の高級官僚を指し、"ハエ"とは中級幹部以下の官僚を指す)を叩くことを徹底してきた。政治生態を純粋で清廉なものにすることを継続し、党、政治、社会の秩序や風潮を引き続き好転させていく」

 一つ目の反腐敗闘争に関する部分である。本連載でも度々扱ってきたが、習近平総書記は、王岐山・中央規律検査委員会書記を右腕に、政権の目玉政策として同闘争を推し進めてきた。過去の挨拶を見返しても、これに関する言及が見られる。特に2年前の2015年版では同闘争への意気込みが強調された。

 「我々は反腐敗闘争の強度を高め、ゼロ容認の態度で腐敗分子を厳しく取り締まる」

 「中国共産党が領導する社会主義国家の中では、発見したすべての腐敗分子に処罰を与える。腐敗も汚職も必ず取り締まり、粛清を施していく」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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