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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

日韓対立は米国にとって障害、トランプ政権は見放しかねない

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第17回】 2017年1月17日
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トランプ政権発足後の外交は、米国、中国、北朝鮮との関係など東アジアを取り巻く全体像で考えていく必要がある。日韓の対立は米国との協力の障害となりかねない

トランプ政権の朝鮮半島政策は
日韓の協力が前提

 韓国「中央日報」は1月14日、「トランプ新政権の韓米同盟強化政策に注目する」という社説を掲載、トランプ政権の朝鮮半島政策が輪郭を表しており、韓米同盟の重要性を再認識し、北朝鮮の核・ミサイル脅威には強硬対応するものと要約される、と安堵感を示している。

 しかし、韓国大統領の諮問機関・民主平和統一諮問会議が調査会社に依頼し、昨年11月19−21日に行った電話アンケートでは米大統領選の結果が北朝鮮核問題に与える影響が大きいと考える人は60.5%であり、北朝鮮が挑発を強めてくる「可能性が高い」との回答は73.0%であった。韓国の多くの国民はトランプ政権に不安を抱いていることがうかがえる(1月15日付「韓国連合ニュース」)。

 中央日報の社説が安堵感を抱いた根拠は、国防長官候補のマティス氏、国務長官候補のティラーソン氏、中央情報局局長候補のポンペオ氏が一斉に米韓同盟を強調したことにある。マティス氏は北朝鮮が挑発する場合には「いかなることもテーブルから排除してはいけない」と述べ、先制攻撃の可能性も示唆した。トランプ次期大統領自身、北朝鮮が核弾頭を搭載し、米本土に到達可能なミサイルを開発していることに触れ、「それはあり得ない」と強い口調で非難している。トランプ氏は大統領選挙期間中「在韓米軍撤収」の可能性に言及し、「北朝鮮の金正恩労働党委員長と核交渉する」と述べていた。中央日報は、当時とは雰囲気が明確に違うと論じている。

 しかし、日韓は米国の雰囲気の変化に甘んじてよいのであろうか。日韓が自身の防衛努力を行わず、米国との協力に及び腰と映れば、トランプ次期大統領の東アジア政策にも影響を与えかねない。それは、韓国国民や日本国民の不安でもある。

 トランプ氏が選挙運動中の4月2日、ウィスコンシン州ロスチャイルドで行った演説で、在韓米軍と在日米軍の朝鮮半島紛争不介入の方針について経済的理由を挙げて説明している。トランプ氏は「19兆ドルにのぼる米国の国家負債が21兆ドルに増え、耐えられなくなるだろう」「2万8500人の米軍が韓国に配備されていることについては、「『狂った北朝鮮』を阻止するために韓国に米軍を配備して得られるものは何か。わたくしたちが『愚か者』と見られるのをやめる時だ」と述べている。そして日本の軍事力強化を促し、北東アジアの秩序維持にかかる米軍の負担を減らすことを主張している(4月4日付「韓国東亜日報」)。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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