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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

トランプ発言に学ぶ「炎上」を招く3つの心理バイアス

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第67回】 2017年1月18日
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クリントン優勢の予測を
覆えした「社会的望ましさ」

 米大統領選のトランプ氏の勝利は、アメリカのみならず、世界で驚きをもって伝えられた。就任直前となった今でも、彼の過激な言動は常に話題になっている。

 以前にもこのコラムで述べたが、クリントン氏優勢だった前評判を覆した裏には、有権者の「社会的望ましさ」が働いていた可能性が高い。政治的に正しくないことや社会的に望ましくないことは公の場では言えない、という社会的な規範が、有権者へのアンケート調査の際に働き、本音ではトランプの政策を支持していても、それを他人には言えないという心理が、大統領選の予測失敗につながった。

 この「社会的望ましさ」が働くのは、当然ながら「自分の意見が他人に知られる」場合だ。これは他人を気にするために起こる一種の「心理バイアス」である。個のバイアスは、普段は人間関係や社会関係を円滑にするために一役買っている。一方、投票が無記名で他人に自分の投票を知られる可能性がない(あるいは非常に低い)と、社会的望ましさを気にせず、本音を表明できるため、多くの人々の予想とはちがった現象が起こったように思うのだ。

 そんな社会的な望ましさを、あまり気にせずに済む(と思われている)のが、SNSなどのネット上での発言だ。フェイスブックは別としても、ツイッターや他のネット掲示板は、匿名性が高いか、犯罪に関わらない限り、ほぼ完全に匿名だ。

 こういう状況ならば、他人の目を気にする必要なく「本音」が吐ける。程度の差こそあれ、そう思っている人が多い。少なくとも実生活で人と会っているときより、言いたいことを言う人は多いだろう。そのため、そして自身の発言をきっかけに「レスバトル」や「炎上」が始まるケースもある。

 中にはトランプ氏や他の政治家のように匿名ではないにもかかわらず、炎上を繰り返す場合もある。何がそうさせるのだろうか。

自分が望む情報だけを
得ようとする「確証バイアス」

 レスバトルや炎上が起こる背景には、さまざまな心理バイアスが関わっている。例えば社会心理学でいう「確証バイアス」と呼ばれるものがそれだ。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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