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村西とおる、前科7犯・借金50億の波乱万丈物語

『全裸監督 村西とおる伝』

栗下 直也 [HONZ]
【第32回】 2017年1月20日
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※イメージ画像です

 安倍晋三首相が28日に米・ハワイの真珠湾を訪問した。当初は、今回が現職首相として初の真珠湾訪問とされていたが、吉田茂、鳩山一郎、岸信介も首相在職時に訪れていたとの報道も出てきた。突如、過去に3首相の訪問が浮上してきたわけだが、真珠湾上空で男女の情事を撮った男は日本どころか世界でも一人であろう。

 村西とおる。もはや過去の人かもしれない。十数年前に息子が超有名難関私立小学校に入学したことで、「あの村西とおるの子が!」と話題になったが、全盛期のパンツ一丁で業務用カメラを抱えて、「ナイスですね」とハスキーボイスで発する姿は多くの人にとって、忘却の彼方だろう。

『全裸監督 村西とおる伝』
本橋 信宏
太田出版
712ページ
2400円(税別)

 とはいえ、この男、一時代を築いたのは間違いない。80年代末には、5つの会社を経営、年商100億円のAV王国をつくりあげた。『SMっぽいのが好き』でデビューさせた専属女優の黒木香は知的な語り口とお下劣なキャラクターのアンバランスさと「腋毛」で、一躍マスコミの寵児となった。AVを世間に知らしめた立役者の膨張は股間も事業もとどまるところを知らず、「空からスケベが降ってくる」と衛星放送事業に進出したが、残ったのは膨大な借金だった。最近は雑誌やバラエティ番組で、「前科7犯、借金50億円」の身で再起を目指した姿が取り上げられたこともあるが、30代以下が思い浮かべる村西像はまさにこれだろう。

 本書『全裸監督 村西とおる伝』はこうした「きわもの扱いされながらもAV黎明期に拡大路線をひた走った『AVの帝王』の評伝」として村西の大文字の歴史も当然ながら詳細に描かれている。AV監督だけにエロの描写はあるし、そうしたシーンも楽しめる。だが、それらをすっ飛ばして読んでも、実に興味深い一冊だ。公私で30年以上の付き合いがある著者があくまでも冷静な視点での緻密な取材と一気読みさせる筆致で、類い希なるビジネスセンスと行動力を浮き彫りにしているからだ。

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栗下 直也 [HONZ]

1980年生まれ、東京都出身。大学院修了後、半年間の無職生活を経て、産業専門紙に記者職で拾われる。現在は電機業界を担当。HONZでは新橋ガード下系サラリーマン担当を自認する。紹介する本は社会科学系、人文系、ルポ、お酒の本が中心。

 


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