ついに米国にトランプ大統領が誕生しました。経済や金融のプロが愛読し、ネタ元にしている刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』ではトランプ氏の当選直後から、株価や為替に及ぼす影響を予想しています。今回はトランプ新大統領の経済政策がもたらす、日本株・日本円への影響について。
「米国至上主義」のトランプ政策は
日本経済に一つとして良いことなし
前回も解説した通り、トランプの政策は「米国第一主義」です。これまで交渉を積み上げてきたTPPから離脱すること、トヨタなど米国以外に工場を新設する企業を厳しく批判していること、中国鉄鋼メーカーに強硬姿勢で臨む布陣を整えていることなどからも、それは明らかです。
その結果、米国の貿易赤字は大幅に減少することになるでしょう。一方で、米国を相手に貿易で稼いできた国(中国や日本)にとってはマイナスです。しかしながら、米国経済の「伸びしろ」は賃金と物価の上昇によって相殺され、限定的なものになるだろうというところまで前回解説しました。
参考記事:トランプ相場は新大統領就任でどうなる? 2017年はバブル!急落の可能性は!?(2017年1月12日公開記事)
2017年に入ってからの金融市場(特に株式相場)は、悪いニュースが出て一時的に価格を下げても、すぐに元の上昇基調に戻る傾向が見られます。この点がトランプ当選前とは異なる点です。
ということは、ニュースと相場動向の予想は別々に組み立てる必要があります。とはいえ、世界の金融市場が全く無節操に動くこともありませんので、それぞれの市場において「何に対して過剰反応し」「何に対して反応しないのか」は、きちんと見ておくべきです。
悪材料でも株価が下げない相場でも
注目しておくべきニュースはこれだ!
まず、トランプ税制改革の目玉の1つ「輸出は非課税」「輸入は経費算入させない」件については、原案通りに承認されてしまうと(どうもそうなりそうです)間違いなく米国以外の世界経済に「超弩級」の影響が出ます。しかし、最も影響を受ける中国と日本の株式市場は、今のところあまりこれに反応を示していません。
次に、1月10日に世界銀行が2017年の世界の実質GDP成長予測を2.8%→2.7%に下方修正、2016年の推定成長率が2.3%とリーマンショック直後の2009年以来の低い伸び率だったことを発表した件です。数字自体は各国政府から提供されるデータが基になっているため当たらないのですが、「希望的観測込み」のデータが下方修正になっていることは気にかけておくべきです。
それから、2017年1月からFOMCの投票メンバーが一部入れ替わり、明らかなタカ派がいなくなりました。トランプ政権下ではインフレ対策のため利上げの継続が必要ですが、新大統領は難色を示すでしょう。近いうち(本年夏ごろ?)利上げ継続に対する議論が再燃することになるでしょう。
貿易総額が2年連続減少している中国と、トランプが「どれだけ本気で喧嘩するのか」も注目です。少なくとも仲良くやることは絶対になく、どれだけの反動があるかは見当がつきません。また、トランプは日本とメキシコの対米黒字を中国と同列に見ているようで、厄介な問題であることは確かです。
英国の金融団体がEU離脱交渉で「単一パスポート制度」(英国の銀行免許があればEU域内すべてで同じ業務ができる)の維持を断念したのは意外でした。短絡的にはシティの地盤低下を意味しますが、大手の金融機関は各国で免許を取っておりこれで一気に崩壊することはありません。それよりもオバマ政権下で目の敵にされていた欧州の銀行を、トランプ政権がどう扱うかがより重要となるでしょう。
米国株はそれほど下げていないのに…
今年に入って日本株が調整した理由
以上が「ニュース」の側面からの注目ポイントですが、今度は(それとは別に)「市場」の側面から予想していきます。
米国の株式市場は、大統領選の直後に11.6%も上昇した後、3週間は調整もせずほぼ横ばいです。期待先行の上昇は普通なら「材料出尽くし」でいったん調整するところ、経済政策に期待感が残っているため「高止まり状態」なのでしょう。しかし、長期金利(10年国債利回り)はトランプ氏当選直後の上昇(1.77%→2.60%)から、先週末には2.39%とはっきりと「行き過ぎ訂正」に入っています。
ここ数年は実際の経済活動の先行きを反映する10年国債の利回りが低下しても、投資家心理をより強く反映する株式市場は上昇を続け、結果としてギャップが拡大していました。ところがトランプ当選直後には米国10年国債利回りもストレートに上昇してドル高になっていましたので、利回りの上昇が止まるとドル高も止まることになります。
日本の株式市場は、米国株高と円安という2つの好材料が重なり、当の米国株よりも大幅に上昇していました。ここで米国の10年国債利回りが低下→ドル高調整となったため、日本の株式市場にとっては2つの好材料のうちの1つが失われ(弱まった)たことになります。加えて、米国株も12月半ば以降は株価2万ドルを前に上昇が止まったので、日本株が調整したわけです。
日本経済が低迷しても多少円高に振れても
株価は下がらずやがて調整もしなくなる!?
ではこれからはどうなるか? トランプの経済政策は米国以外(特に日本)にとっていいことは何もありません。しかし、もともと日本の株式市場は実体経済とはほとんど関係なく、米国株と為替の動向次第で動く安直な動きを繰り返してきました。つまり、トランプの経済政策が日本経済に悪影響を及ぼしたとしても、日本の株式市場が低迷することはないと考えます。
為替市場もドル高が基本路線となりますが、トランプの政治的発言などで円高に振れる場面もあるでしょう。これまで日本株は(米国株と為替の動向次第で動くので)ドル高になると下落する傾向が見られましたが、最近は円安になったときの上昇幅と円高になったときの下落幅が釣り合わなくなってきています。この先は、多少の円高になっても日本株はそれほど調整しないようになるはずです。
だから今年は(特に株式市場は)「バブル元年」なのです。
本連載は金融・経済のプロも愛読し”ネタ元”にしていると評判の刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』で配信された記事から、一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガにご登録いただくと、政治経済や金融の話題を中心に、歴史文化や娯楽まで他のメディアでは決して読めない、濃くて深くてためになる記事が、毎週1回5本程度の本編と付録、番外編、速達便がお読みいただけます。日々のニュースを読み解くセカンドオピニオンとしてご活用いただければ幸甚です。
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