最初から全てのレベルで思考・業務遂行できる人はいません。これはという人材を見つけたら「判断力」を磨くトレーニングが必要です

 イギリスがEUを離脱し、アメリカにはトランプ政権が誕生。世界は今まさに大変化の時代にある。こうした新しい現象の裏では、構造的な枠組みが大きく変化している可能性がある。地政学的にも科学技術的にも大きな変化が生まれている今、それらが重なり合ってどのように変化していくかは、常人では想像すら難しい状態にある。したがって、このような時代においては、会社の舵取りを巧みに行うことがこれまで以上に重要になる。この役目を担うのは経営者である。どの組織においても「この人の言うことならついていこう」と思える優秀な経営者が必要だ。

 私が思うに、こうした時代のリーダーに求められるのは以下のような資質だ。

 (1)自分こそが舵取りを担うという強烈な「責任感」と、ともに働く人たちと自らをも鼓舞する「情熱」(静かな情熱もある)に満ちている

 (2)組織がこれからどの方向に向かうのか、判断の軸を明確に持つ。そして、場合によっては修正していく

 これらは、マックス・ウェーバーが『職業としての政治』で著した、社会のリーダーとしての政治家に求められる3つの重要な資質の「情熱」「責任感」「判断力」と重なる。

 さて、あなたの会社のトップはこれらの要件を満たしているだろうか?

 こういう質問をすると、たまに「YES!」と答える人がいる。最近の会社は良い経営者を任命するようになったのだなと思うこともあるが、基本的にはほとんどの人が「NO!」と答える。

 では、質問を変えて、あなたはこの3つの資質を満たしているだろうか? あるいは、将来的に満たす可能性はあるだろうか?

 これに対してもまた、ごくごく少数の「YES」があり、ほとんどは「NO」という答えが返ってくる。

 では、あなたの周りに、“将来”このような頼りになるトップになる可能性のある人はいるだろうか?

 こう聞くと「数人いる」と答える人が多くなる。

 新規事業を成功させた事業部長や、経営計画のとりまとめで主要な役割を果たした経営企画部長など、「役員前の部長」あるいは「平の取締役」の名前が挙がる。