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岸博幸のクリエイティブ国富論

大震災と原発事故がもたらす東日本の空洞化懸念と
日本経済の運命の分かれ道

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第132回】 2011年3月25日
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 大震災と福島第一原発の事故は、被災者の生活のみならず、日本の企業にも大きな影響を及ぼしている実態が徐々に明らかになってきています。それが何をもたらし得るのかをそろそろ考えるべきではないでしょうか。

 東日本の空洞化は避けられないし、もしかしたら日本全体の空洞化にもつながりかねないのです。

グローバル・サプライチェーンへの影響

 すでに大震災の影響で自動車産業に大きな影響が生じていることは報道されています。トヨタは国内での生産停止を26日まで、またホンダは27日まで延長しました。日産などの他の自動車メーカーは在庫部品で生産を開始しましたが、一時的なものであり、先の見通しは立っていません。

 これは、東北や北関東で多くの下請け部品メーカーが被災し、他の取引先では置き換えられない部品もあるためです。また、東日本での計画停電や輸送用の燃料の不足も大きな障害になっています。

 そして、それと同様の事態は海外でも起きています。

 今や製造業では“グローバル・サプライチェーン”、即ち、世界中のあらゆるところから価格や品質などを踏まえて最適な部品や原材料などを調達して、最終製品を組み立てる構造が一般化しています。

 そして、日本は、自動車やコンピュータ、民生電子機器などの部品の製造において非常に重要な地位を占めているため、今回の大震災がグローバル・サプライチェーンにも大きな影響を及ぼしているのです。米国で報道されている事実だけを集めてみても、すでに様々な被害が報告されています。

 例えば、ゼネラルモーターズ(GM)は、日本製の部品の不足により、シボレー・コロラド、GMCキャニオンといったトラックを製造しているルイジアナの工場を一時的に閉鎖しました。

 トヨタのピックアップ・トラックやSUVセコイアの後部車軸と後部サスペンションを製造している日野自動車のアーカンソーの工場は、部品の20%を日本から輸入しており、それらの多くが他のサプライヤーに切り替え困難なため、すでに米国の倉庫に届いている部品がなくなった後どうするかが問題となっているようです。

 ボルボは、欧州の自動車メーカーの中でもっとも日本製の部品への依存度が高いが、日本での調達先のうち7社が地震と津波の影響を受けたため、出荷済みの部品がどれくらいあるかを急いで確認中です。

 また、米国でも3月11日に発売されたばかりの人気商品であるアップルのiPad2は、5つの部品が日本製と言われています。

 その中で、例えばiPadやiPhoneのチップのプリント配線板に必要なBTレジンは、三菱ガス化学の福島工場で製造されていますが、それが津波に被災したため、供給不足が懸念されています。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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