「日本型ベーシックインカム」をもう一歩進める一案

民進党が発表した
「日本型ベーシックインカム構想」

 先日、民進党のある議員さんから、フェイスブックのメッセージを通じて、民進党が「日本型ベーシックインカム構想」を持っていることを紹介された。同党のホームページで、古川元久税制調査会長の談話のかたちで発表されている(https://www.minshin.or.jp/article/110657)。

 筆者は、ベーシックインカムを優れた制度だと長年考えており、「ベーシックインカム的」な制度を徐々に実現することが望ましいと思ってきた。一方、本音の予想としては、ベーシックインカムが官僚の権限と裁量を奪う制度であることから、日本では制度として実現しないだろうと考えていた。

 しかし、現在、党勢が衰弱しているとはいえ、最大野党である民進党がベーシックインカムを正面から取り上げようとするなど、ベーシックインカムは筆者の想像以上に関心を集めているようだ。

 古川氏の談話を読むと、まず、基礎控除、配偶者控除、扶養控除を高額所得者の控除が大きくなる所得控除から税額控除にリニューアルすることを第一段階とするとしている。この過程で、配偶者控除と扶養控除を廃止して、「世帯控除」を新設する構想のようだ。

 古川氏は、与党が主張する配偶者控除を拡充したうえで所得制限を設けるとの手法を批判しているが、この点はもっともだと考える。現在、東京都の小池百合子知事が検討中の私立高校無償化の所得制限にも言えることだが、所得制限は、一般受けしやすいが、特定の所得レベルを境に稼ぎのインセンティブを歪めるし、制度を不必要に複雑化して国民・官僚双方の手間が増える「愚かな」仕組みなので、原則として止める方がいい。給付は一律に行って、高所得者(あるいは高額資産家)の負担は税金で調整するのが簡明で効率の良い方法であり、「ベーシックインカム的」な政策の基本的な考え方だ。