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日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?
【第2回】 2017年2月2日
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村上尚己

なぜ「史上最悪の米大統領」なのに世界の株価が上がるのか?
国内アナリストたちの予想は「全滅」だった…

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トランプ新大統領誕生にまつわる経済ニュースには異常な悲観論が渦巻いている。メディアに踊らされないためには、どこまでが本当のリスクで、どこにチャンスが隠れているのかを冷静に見抜く態度が必要だ。

「トランプ相場」の到来を的中させた外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏は、日本の大新聞・テレビが垂れ流す「通説」を鵜呑みにすることの危険性を訴える。これから日本経済で起こることを分析・考察した注目の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。

アナリストらの「円高予想」は全滅

今回はまず、ドル円為替に関する報道に見られる報道を考察していこう。

[通説]「トランプ大統領なら100円割れの円高になる」
【真相】否。日本だけの異常な予測。「真逆」が正しい。

トランプショックの前後、日本の経済紙やテレビニュースでは、円高リスクを強調する論調が目立った。まずみなさんに思い出していただきたいのは、結果的に、それらの予想は壊滅的な大外れだったということだ。

他人の傷をほじくり返すようで恐縮だが、当時のウェブニュースの記事見出しをいくつか挙げてみよう(2016年9月末~11月初旬に配信されたもの)。

 「米大統領選挙後はドル安と新興国株高へ」
「米大統領選挙後の円高濃厚、来年90円台か」
「円高終焉は本当か、ドル107円に壁」
「消えぬドル95円リスク、円安再開は来春か」
「米大統領選、どちらが勝っても円高濃厚」

為替はマーケット予想のなかでも最も困難なものの一つだ。プロでも的中はなかなか難しい。だがこれらの見出しを見ると、多くの国内アナリストやメディアが、揃いも揃って「円高リスク」を既定路線としていたのには驚かざるを得ない。

いったいなぜこんな偏りが生まれてしまったのだろうか?そして、なぜ私は世の中のこうした過剰反応を冷静に見ていられたのか?あのとき起きていたことを簡単におさらいしながら、トランプショック報道に騙されなかったマーケットのプロたちが考えていたことをご紹介していこう。

「トランプショック」を煽っていた
日本のテレビ・大新聞

私が勤務する外資系運用会社でも、米大統領選は2016年最大の政治イベントとして注視されており、選挙後の世界の株式・為替・債券市場のシナリオについては、入念な分析が行われていた。

米大統領選の開票日は11月8日、東京時間で言えばこれは11月9日にあたる。私を含め東京オフィスの人間たちは、当日朝8時台から開票速報にくぎ付けだった。事前に想定されていた「クリントン勝利」が報じられないまま、ただ時間だけが刻々と過ぎていくと、次第に金融市場の雰囲気も変わりはじめた。

今回の選挙で勝負の分かれ目になったと言われているのが、共和党・民主党の勝敗が毎回入れ替わる接戦州だ。最大の接戦州であるフロリダ州の動向に関して、「クリントン候補有利か!?」「いや、トランプ候補有利か!?」との報道が交錯し、それに合わせてドル円相場が上下していた。

そして、東京時間午前11時過ぎ、フロリダ州でのトランプ候補勝利の可能性が高まった。米大手メディアが一斉に「トランプ大統領が誕生するかもしれない……」との速報を打つと、それまで1ドル105円前後で推移していた為替レートが103円台まで大きく円高に動き、日経平均株価も下落した。

その後、トランプ候補の優勢が揺るがないと見るや、円高・株安の値動きは止まらなくなった。ドル円は101円台まで大きく円高が進み、日経平均株価も約1000円の急落。こうした東京時間の値動きに応じて、NYダウ平均株価など欧米株式の先物価格も、総じて前日比約5%安の水準で取引されていた。

速報性の高いウェブやテレビのニュースでは、マーケットの混乱状況を取り沙汰する報道が飛び交い、トランプショックの到来を告げていた。これらを目にした多くの人が、破滅的な大混乱が世界経済に襲いかかるかのような印象を持ったはずだ。

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村上尚己(むらかみ・なおき)

アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト
1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。
第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(原田泰・片岡剛士・吉松崇[編著]、中央経済社)がある。また、東洋経済オンラインにて「インフレが日本を救う」を連載中。


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