では、どうしたらいいのでしょうか。

 重ねて伺ったところ、「法律でペナルティを課す」、「アウトレットで消費期限間近のものを販売する」といった意見のほか、消費者(顧客)側に対しても「賞味期限や消費期限についてきちんと理解し、食べられるのに些細な理由で嫌悪することを控えてほしい」といった要望がありました。

個人の気持ちとしては
「もったいない」

 私は踏み込んで、「仕事上で食べ物を捨てたときに抱いた感情」についても聞いてみました。「後ろ向きの作業で無駄」「疲れる」「苦痛」「もったいない」「自分の力量にがっくり」「世の中おかしい」「貧困国の子どもの顔が浮かんで申し訳ない」「産まれてきた牛に申し訳ない」等、残念さや罪悪感をあらわす“素のままの気持ち”が伝わってきました。

 フランスの法律が成立してから「日本でも同様の法律を」という声を聴きます。それも一案でしょう。ただ、余ったものを捨てずに寄付する以前に、「作り過ぎない」「売り過ぎない」「買い過ぎない」といった、「適度な製造・販売・消費」が求められていると思います。

 それは2015年秋の国連サミットで決められた「持続可能な開発目標」(SDGs、Sustainable Development Goals)の17のゴールのうち、12番目でも謳われています。もう大量生産・大量消費の時代ではないでしょう。先進国として、環境配慮しながらのビジネスが必須と考えます。

◆2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」

出典:国連開発計画  拡大画像表示

 個人としてなら正常に判断できる。でも、組織としては感覚が麻痺して異常な行動(=大量廃棄)をとってしまっている。それはなぜなのでしょう。

 かつて私は食品メーカーの広報責任者として、個人で思ったことがあっても、会社を代表する立場としては口を閉ざす場面が多くありました。会社を辞めて独立した今思うのは、「自分の本心や五感」を殺して働いていた部分があった、ということです。

 それは“組織人”として働く人の多い日本社会全体にいえるのではないでしょうか。個として働くのでなく、組織に所属して働くと、「組織>個人(個人より組織の意向で動く)」の関係式ができます。

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 組織人は、組織から給与も出張費ももらう。自分の懐が痛まない。必然的に、当事者意識は希薄になるのではないでしょうか。個人として食料廃棄はもったいないと感じても、組織としては仕方がないし、自分がそのコストを払う訳でもないし、所詮は“他人ごと”なのかもしれません。

 1月26日に、NHKのニュースを見ました。毎年、コンビニ本社は各店舗に“ノルマ”を課しており、アルバイト店員らに恵方巻を無理矢理買わせていた事例が多々あったようです。本来、恵方巻は「幸運を招く」という謳い文句なのに、それでも売れ残って廃棄するのなら「運を開く」どころか、逆に「運気を落とす」、「バチがあたってしまう」のではないでしょうか。