壱番屋の廃棄冷凍カツ横流しから明るみになった一連の事件。事件の背景には、食品リサイクル産業の構造的問題と、業界を跋扈する「廃棄食品ブローカー」たちの存在が見え隠れする。

綻びが見え始めた関係者の証言
真相究明はまだまだこれから

 壱番屋だけではなくマルコメ、イオン、ローソン、さらにはセブン-イレブンまで…。拡大の一途をたどる廃棄食品の横流し事件。産業廃棄物処理業者・ダイコーが廃棄食品を製麺会社・みのりフーズに販売、そこからさまざまな食品業者に転売されていったことが明らかになっている。発覚直後の愛知県の調査では、産業廃棄物処理業者ダイコーの大西一幸会長が「ひとりでやった」と答えたというが、ここまで大規模な「フードロンダリング」となると、本当に個人の思いつきだけで実現できるのだろうか。

 実際、ここにきて廃棄品だと知らずに転売に関わったと主張する、みのりフーズの実質的経営者・岡田正男氏の言い分にも綻びがでてきている。

黒幕発覚はこれから!?<br />廃棄食品横流し事件の深い闇壱番屋の冷凍カツ横流しに端を発した事件。関係者の証言はつじつまが合わないものも多く、真相解明にはまだまだ時間がかかりそうだ
Photo:伊藤真吾/AFLO

 《ダイコーの関係者によると、会長は愛知県警の聴取に、廃棄物処理法違反の疑いが持たれているビーフカツの横流しを「(岡田氏と)相談しながらやった」と説明。両者の言い分は食い違っている》(読売新聞1月19日)

 ほかにも筋の通らぬ話がある。みのりフーズから廃棄カツの大半を買い取った愛知県内の食品業者は、今から2年ほど前に「壱番屋のカツがある」と1枚40円で取引をもちかけられ、その時期に喫茶店でダイコー大西会長とも会ったと「岐阜新聞」の取材に応じている。

 この食品業者はその際、大西会長から「運送業をしている」と自己紹介を受けたと思い返しており、あくまで今回の騒動まで、ダイコーの関与を知らなかったことを匂わせているのだが、みのりフーズの岡田氏はこの食品業者を「ダイコーの知り合い」と述べている。関係者の証言が合わず、ストーリーに一貫性がないのだ。

 真相は定かではないが、食品流通の不正現場で、真相を覆い隠すために口裏合わせをおこなったものの、メディアや捜査機関の厳しい追及でストーリーが破綻することは珍しくない。

 つまり、関係者の証言が食い違うというのは、「黒幕」をかばっているなど、なにかしらの「隠蔽工作」がおこなわれている可能性があるのだ。