2007年10月の郵政民営化からわずか4年足らず。黒字を維持してきた日本郵便は今期、突如として大赤字に転落した。債務超過が目前に迫るまでになった原因は何なのだろうか。

「抜本的な収支改善に早急に取り組まなければ、毎年度1000億円を超える営業損失が拡大していくおそれがあると考えます」

 今年1月に日本郵便が総務省に提出した、昨年9月期の中間決算の赤字に関する報告書には、経営危機の現状が書かれている。

 日本郵便は中間決算で928億円もの営業赤字に転落、通期では1185億円もの赤字に転落する見込みだ。さらに来期も970億円の営業赤字と、2期で2100億円以上の赤字が出るというのだ。

 従来、郵便事業は上半期に赤字になることはあっても、下半期にはドル箱の年賀状があるため、通期では黒字になるのが一般的。ところが、今期は下半期にさらに赤字が拡大し、民営化前の日本郵政公社時代でさえなかった初の通期での営業赤字に転落するのだ。

 日本郵便は赤字転落の原因を先の報告書では、電子メールや電子商取引の普及、さらには不況による郵便物減少と、昨年7月の遅配騒動にあるとしている。

 だが、郵便物の減少は突如始まったことではないし、遅配騒動はあくまで一時的なものだ。

 実際、図(1)のように、郵便事業は公社時代から営業黒字だった。郵便物の長期減少傾向に対し、人員削減により黒字を維持するという縮小均衡策の成果である。また遅配騒動は終結し、来期決算への影響は数パーセントの客離れくらいのはずだ。

 にもかかわらず、なぜ来期以降も大赤字が続くのか、報告書には具体的な説明は見当たらない。

「郵便物の減少による収益の減少という構造的な問題に対応」「平成24年度(2013年3月期)に単年度営業黒字確保を目指す」と、赤字転落は市場縮小による構造的な問題で、それを経営努力で解決できるかのような文言が並ぶ。

 だが、日本郵便の赤字転落の最大の元凶は、昨年7月にゆうパックと事業統合したJPエクスプレス(JPEX)である。

 そもそもJPEXは郵政民営化の目玉事業だった。図(2)のように、宅配市場はヤマト運輸、佐川急便の2強が市場の7割以上を握り、年々寡占化が進んでいる。2強に押されて、共に赤字体質のゆうパックと、日本通運のペリカン便を外部に切り出して事業統合し、規模拡大による効率化で業界2強を追い上げるはずだった。