『週刊ダイヤモンド』2月18号の第1特集は、「〜JA解体でチャンス到来!〜儲かる農業2017」です。政府主導の農協改革が折り返し地点を迎え、いよいよJAグループの解体が近づいています。競争力のない既得権者が市場からの退出を迫られる一方で、強い農業経営者、強い農協、強い企業には、勢力を拡大できるチャンスが広がっています。農業関係者や就農希望者は必見の特集です。

 安倍政権が農協改革に本腰を入れて2年余り。"儲かる農業"を実現しようと努力するJAとまったく危機感のないJAとの二極化が進んでいる。後者には衰退の道が待ち受けている。

 東京都の永田町や大手町では、農協改革を〝停滞〟させようとするJAグループの守旧派や農林族議員の動きが後を絶たない。

 だが、全国に散らばる地域農協にとっては、中央での政治的駆け引きを見守っている余裕などない。

 とりわけ、今後、業績悪化が避けられない金融事業に依存しているJAはなおさらだ。今こそJAの〝本分〟である農家のための組合に立ち返るときに来ている。

 本誌では、1500人の担い手農家が格付けする「JA満足度ランキング」を作成した。担い手農家によるランキング作成は、昨年の農業特集(本誌2016年2月6日号の「儲かる農業」特集)に続き2度目の試みとなる。

 今回のランキングでは、前回も採用した農家からの「支持率」だけではなく、JAが、農家の農業所得の向上に役立つ改革をしているかどうかを問うた「改革実感度」も評価項目に加えた。 

 というのも、今は、政府が定めた5年間の「農協改革集中推進期間」(JAグループに与えられた自主改革の期間)の折り返し地点に当たる。JA改革が進んだならば、組合員である農家が改革の恩恵を受けてしかるべきステージなのだ。

 安倍政権が描いた農協改革のシナリオが発火点となり、JAグループに競争意識が持ち込まれた。

「同じグループだから、農産物の販売でも、農業資材の購入でも全農を利用するのが当たり前」という慣例から解き放たれたのだ。まさに〝脱・JA全農〟依存の時代が到来している。

 そしていみじくも、ランキング上位のJAに共通するキーワードが「全農ルートに依存しない販売力」である。以下が『JAランキングベスト10』だ(図版参照)。

 

 首位のJA越前たけふ(福井県)は、〝農協改革の旗手〟として知られる存在だ。

 JA越前たけふは、コメの販売で経済連(他県では全農に当たる組織)を一切利用しない。アレフが運営するハンバーグ店「びっくりドンキー」など大手外食チェーンや小売業者と、安定的な長期契約を結んでいる。

 福井県で経済連が集荷するコシヒカリの価格は60㌔当たり約1万1300円(15年産)だ。一方で、JA越前たけふに出荷する農家の販売額はこの価格より同1200〜1700円高い。さらに、減農薬など環境に配慮したコメともなれば、同1万円近くも高く売れるという。農家の士気が高まるのも当然のことだろう。

 改革実感度も90㌽と断トツであり、回答した農家の大半が改革の成果を実感しているようだ。

 2位に輝いたJA魚沼みなみ(新潟県)は、「南魚沼産コシヒカリ」という押しも押されもせぬブランドを、確かな販売力で下支えしている。

 JA魚沼みなみは、16年産コシヒカリ60㌔当たり1万8000円を農家に概算金(前払い金)として支払っている。同県の平均的なコシヒカリ同1万3600円と比べても、その競争力は一目瞭然だ。回答者によれば、「魚沼産コシヒカリを作る県内の他の産地と比べても、同800〜1000円高く売ってくれる」という。

 JA魚沼みなみは、農家から集めたコメの9割を、独自の販路で売る。仮に、全農を通して売れば、県内他産地のコシヒカリと差別化した販売がしにくくなってしまうからだ。

 現時点で、JA魚沼みなみはコメの2割を消費者やスーパーに直接販売しているが、その直販扱い量を2倍にするため、精米工場を建設している。

 3位はJAたんなん(福井県)。「毎日、営農指導員が近所を軽トラで走っている。いつでも呼べる安心感がある」など農業にひたむきに取り組む姿勢が評価された。

 そして、農家に生産資材を安く提供することで4位に食い込んだのが、JAぎふ(岐阜県)である。

「農薬がホームセンターより割高なのはおかしい」という農家の声を受けて、JAぎふは価格をこの3年間で1割も下げたのだという。

 グループ内のもたれ合いを断ち、グループ外の調達先を採用したところ、全農からの調達割合は約75%から55%に低下。焦った全農がシェアを取り戻そうと値下げに応じたというから、競争原理が働いた好例といえるだろう。

 翻って、ランキング下位のJAが置かれた環境は厳しい。下位の単位農協は、支持率のみならず改革実感度も低迷する傾向にあり、ジリ貧の状況にある(JAランキングの詳細は本誌をご覧ください)。

 農家を支配する農協ではなく、農家に選ばれる農協へ。金融事業ではなく、農産物で儲ける農協へ。JAが原点回帰の時を迎えている。

 

「偽装米」疑惑で発覚した
JAグループの闇

『週刊ダイヤモンド』2月18日号の第一特集は「〜JA解体でチャンス到来!〜儲かる農業2017」です。

 昨年、大好評を得た農業特集(2016年2月6日号の「儲かる農業」特集)をパワーアップさせた特集を作りました。

 特集のキラーコンテンツは「JAランキング」と「儲かる農家の秘訣」です。

 その両方が、経営拡大意欲のある担い手農家1500人のアンケート結果をもとに、作成しています。彼ら担い手農家は、農地中間管理機構(農地集積バンク)の農地の受け手として申請している有力農家ばかり。本誌が情報公開請求によって名簿を独自に取得しました。

 安倍政権が農協改革に着手してから2年余り。単位農協でも農家でも、強いところと弱いところの「二極化」が加速しています。農協改革が足踏みしようとも、米国離脱で環太平洋経済連携協定(TPP)が空中分解しようとも、農業の「フツーの産業化」への流れは変わりません。

 競争ルールが持ちこまれた農業界では、経営マインドのある農協や農家しか生き残ることはできないのです。

 競争力のない既得権者は市場からの退出を迫られますが、その一方で、本気で農業に挑もうとしているプレイヤー――強い農業経営者、強い農協、強い企業――にとっては、勢力を拡大できる千載一遇のチャンスが訪れています。

 実際に、担い手農家の中でも高収益の「モデル農家ベスト20」に選ばれた農家の利益率は30〜60%とガッポリ稼いでいます。特集では、農場経営で稼ぐノウハウをひっそりと公開してもらいました。

 また、建設機械で圧倒的な存在感を示しているコマツもいよいよ「農機」へ参入します。遅々として進まなかった企業の農業参入も、再加速の兆しがみえてきました。

 一過性の農業ブームが去り、本気で農業界への転職を検討するビジネスマンも増えています。農家で年収1000万円を目指す人もいれば、農家以外のお仕事で「就農」し、やはり年収1000万円を目指す人もいます。

 特集の冒頭では、JAグループの「偽装米」疑惑に関するスクープを打っています。変わらぬJAグループの殿様体質、疲弊するコメ流通の現場をみるにつけ、農政改革の重要性を感じずにはいられません。守旧派の抵抗で後退したかにみえる農政改革について、小泉進次郎・自民党農林部会長に大反論してもらいました。

 とにかく、農協関係者、プロ農家、就農希望者――すべての農業関係者の皆様に満足いただけるような「すぐに使えるノウハウ」をふんだんに盛り込みました。「自信の一冊」をお届けいたします。