ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
にっぽん新名産

なぜ地方の「名産品作り」は失敗しがちなのか

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第4回】 2016年11月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
「徳島のソウルフード」といわれるフィッシュカツも立派な名産品だ

 各地で県産品のPRが盛んだ。人口減少によって足元の市場規模が縮小していくなか、需要が見込める都市圏で消費を伸ばしたい各自治体の思惑がある。ところが「名産品」を売り出したものの、見向きもされずに消えていく例も多い。

 今回は『とくしまブランド推進機構』(愛称:地域商社阿波ふうど)の試みを紹介したい。今年の4月に開設されまだ半年だが『阿波ふうど』というブランド名で徳島県食材の販路拡大などを進め、すでに首都圏で販売先を開拓するなど着々と成果を挙げている。

 このプロジェクトのキーマンである統括マネージャーの溝口康氏から詳しい話を伺い、知名度の低い徳島県産食材を売り込み、新たな名産品をつくっていくためのヒントを探った。

役所のプロジェクトに
縁もゆかりもない民間人を抜擢

統括マネジャーの溝口康氏

 このプロジェクトにはいくつか注目すべき点があるが、まず現場のトップに民間出身者を抜擢したことが挙げられる。統括の溝口氏は大手百貨店出身。洋服や食品のバイヤー、売り場の責任者などを歴任し、三十年以上を販売の現場で過ごした経験を持つ。役所のプロジェクトに民間出身の抜擢は異例だ。

 「『徳島にご親戚でも?』とよく聞かれるのですが、このお話をいただくまで縁もゆかりもありませんでした。はじめは農産物の売り込みなら他に適任の方がいるのではと思いましたが、ブランド化したいという想いを伺って、それなら自分にもできることがあるかな、と働かせていただくことになりました」

 二つ目の注目すべきポイントはとくしまブランド推進機構が県庁、JA徳島、農協中央会、農業開発公社の四者で設立された組織であるということだ。県産品のPRは各自治体で行われているが、県と農協、中央会などが垣根を超えて一つの組織をつくった例は全国的にはじめて、という。

 異なる立場の組織が一つのプロジェクトを進めるにあたり、難しいことはないのだろうか。

 「それはないと言えば嘘になりますよ。けれど、行政や民間といったことにかかわらず、まとまって何かをつくるのに理解しあうプロセスは付き物です。この組織の目的はただ一つ、生産者の所得向上です。どこかで相反する部分は出てくるかもしれませんが、お互いにわかりあえば前へ進めるはず。そういえば印象的な事がありました」

 8月に県庁でベンチャー企業「プラネットテーブル」の食材供給システムの説明会が開かれた。プラネットテーブルは東京の環状七号線の内側にある飲食店に生産物を卸すサービスを行っている会社である。すでに全国3000の農家から生産物を集め、1000の飲食店に卸すなど、順調に業績を伸ばしている。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


にっぽん新名産

日本の地方にはまだまだ魅力がある。でも、地方にいると、その良さに気付けなかったり、どう磨けばいいのかわからなくなる。そんな地方の“原石”を地元の英知を結集して磨き上げ、外部の力を借りて魅力を引き出した事例を紹介。地方の隠れた資産や原石をどう磨けば全国や世界で愛される商品になるのか。その秘訣を事例とともに紹介する。

「にっぽん新名産」

⇒バックナンバー一覧