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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

社内調査はなぜ壁に突き当たった?
インタビューは心理戦!!
いかにして疑惑社員を口説き落とすか

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第22回】 2011年4月6日
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不正融資疑惑の発覚

 I興産は、九州地方に拠点を構える、中堅の金融会社である。そのI興産が、不正融資疑惑に揺れていた。

 複数の社員が、与信先の信用状況調査に手心を加えて、貸付先の返済能力を超えた貸付を行っている、という内部通報があったのである。最近の地域経済の停滞もあり、I興産の多くの貸付先の財務体質は、ぜい弱化していた。そのような事情を考慮し、I興産では6ヵ月までの期間の返済滞留に関しては、管理担当者の申請があれば、特に厳しい取り立てを行わなくて構わないというルールになっていた。

 つまり、管理担当者の申請があれば、6ヵ月間以内の返済滞留は実質的に許容されていたのである。そして、この制度を悪用することで、疑惑対象となった複数の社員は、自分たちの担当する融資先に関して、信用状況調査を甘くして融資先を増やすとともに、返済の滞留期間が6ヵ月を超過しそうになると、そのような問題貸付先の滞留を隠蔽し、問題の発覚を逃れることに成功したのだ。

 手口としては、返済の滞留が生じていない優良な貸付先の同意を取り付けたうえで、優良な貸付先が返済した資金を、問題貸付先経由で返済させることにより、表面上、問題貸付先からの返済があったかのように偽装する。これによって、問題貸付先の返済滞留を一時的に消し去ったのである。

 その際、一時的には、操作に協力した優良貸付先側で返済滞留が生じたように見えるが、その後、数ヵ月以内に、その返済滞留金額にいくらかの謝礼が上乗せされた金額が、問題貸付先から優良貸付先へ弁済されることにより、その滞留状況は解消されることとなっていたのである。

デジタルフォレンジックの効果

 不正融資疑惑の内部通報を受けて、内部監査チームによる分析調査が始まった。その分析調査の結果、これらの疑惑社員が担当する貸付先の返済滞留期間は、他の貸付先の滞留期間よりも明らかに悪化していた。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


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海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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