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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

一度手を染めたら抜け出せない粉飾決算
経営者は粉飾決算への加担者を守ってはくれない

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第18回】 2011年1月19日
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それは社長のコメントから始まった

 T商事の経理部長のYは、前年度の期末に行われた、前年度決算に関するS社長との面談を恨めしく思い出していた。内容は前年度決算に関するものだった。

 T商事はその前年、つまり今から2年前、急激な円高の影響により通期で赤字決算を強いられており、前年度も放っておけば赤字決算となるおそれが高かったのである。もしそうなれば2期連続の赤字となり、金融機関からの融資停止や融資条件の悪化、公共部門との取引停止など、企業経営に重大な悪影響が及ぶことは確実であり、最悪、倒産のリスクもゼロではなかった。

 面談の席において、S社長から経理部長のYに対して、次のようなコメントが伝えられた。メインバンクの役員には内々に黒字化を約束してしまっており、赤字決算になったら会社が存続できない可能性があること。会計上の利益が出せるように指導する重大な責任が経理部長にはあること。社長はY部長を優秀な経理部長であると見込んでおり、必ずよい結果を残してくれるものと確信していること。

 Yは、S社長からの直々の申し伝えに、これは実質的に黒字決算の指示であると感じ、「最善を尽くします。」と応えて、社長室を後にしたのである。

経理部長の誤算

 結局Yは、売上高を10億円前倒し計上して、当初の予算を達成する水準にまでかさ上げし、売上原価を差し引いた6億円の利益を水増しするとともに、2億円分の経費の計上を翌期に繰り延べることにして、合計で8億円の利益をひねり出した。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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