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めちゃくちゃわかるよ経済学 シュンペーターの冒険編

95年前に発想したイノベーションの原理

坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]
【第1回】 2007年10月17日
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 ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)。

 世界中で知られる高名な経済学者であり、世界中の経営者やビジネスマンにも大きな影響を与えている経済思想家だが、シュンペーターの著書が現在、広く読まれているわけではない。岩波文庫に代表作は収録されているものの、たぶん読破した人は稀であろう。もともとドイツ語で書かれ、表現も難しくて経済学のアマチュアがすらすら読める書物ではないからだ。しかし、シュンペーターの主たるアイデアはだれでも知っているはずである。

 シュンペーターは弱冠25歳で初めての著作である『理論経済学の本質と主要内容』(1908、注1)を上梓した。そしてさらにアイデアを膨らませ、1912年に刊行し、26年に改訂された『経済発展の理論』(注2)第2章「経済発展の根本現象」で、経済成長を起動するのは企業家(アントレプレナー)による新結合(ニューコンビネーション)だとしたのである。

 シュンペーターは新結合として次の5項目をあげている。この5項目についてはいろいろな翻訳があるが、ここではドイツ語から直接翻訳して簡略化した清成忠男氏(法政大学名誉教授)の表現を引用する(注3)。

 ・新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
 ・新しい生産方法の導入
 ・産業の新しい組織の創出
 ・新しい販売市場の創出
 ・新しい買いつけ先の開拓

 こうした新結合を遂行することがイノベーション(新機軸・革新)である。そして遂行の担い手が企業家であり、資金を供給するのが銀行家だと定義した。注意していただきたいのは、イノベーションが技術革新だけを意味しているのではなく、組織論まで含んだ非常に広い範囲の新機軸を表していることだ。

 シュンペーターは上記5つの簡略化された表現よりも、もう少し詳しく述べているが、これについては項をあらためて解説する。今回はとりあえず新結合の内容を頭に入れておいていただきたい。

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坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

1954年生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集長などを経て現職。著書に『複雑系の選択』『めちゃくちゃわかるよ!経済学』(ダイヤモンド社)『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会)など。


めちゃくちゃわかるよ経済学 シュンペーターの冒険編

「経済成長の起動力は企業家によるイノベーションにある」とする独創的な理論を構築したシュンペーターの発想の冒険行を、100年前のウィーンから辿る知の旅行記。

「めちゃくちゃわかるよ経済学 シュンペーターの冒険編」

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