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実録・底上げ人材育成術

人事評価を賃金に反映させるのは必ずしも正義ではない

山元浩二 [日本人事経営研究室(株)代表取締役]
【第5回】 2015年10月12日
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 前回の記事「成果主義の落とし穴 お金で動く社員はお金で去っていく」は、連載開始からここまで最も多くの方にお読みいただきました。見出しが刺激的であったばかりではないと思います。そこで書いたことは、私が18年間、中小企業の現場で見てきた本当のことなので、皆さんにも思い当たる節があったのではないでしょうか。

 改めて申し上げると、人材育成や人事評価、賃金制度に関してスポットライトを浴びているものの多くは、大手企業で導入された手法や、アメリカを中心とする外資系企業の影響を受けた内容が反映されています。もちろん、グローバル化や終身雇用の崩壊といった変化の中で、一定の成果を上げたものもあります。

 しかし、連載でお伝えしてきたように、中小企業がそのまま取り入れると逆効果になるリスクがあります。今回はもう一つ、皆さんに考え直していただきたい言説があります。それは、「人事評価の結果はそのまま賃金に反映させる」というものです。

「評価→賃金」の考え方の落とし穴
人事評価制度は何のためにある?

 評価と賃金を結びつけることに疑義を呈すようなことを書くと、「何のために評価制度を作っているのか?」と驚かれるかもしれません。私自身の経験でも、契約したばかりのクライアント企業の経営者の多くが、「評価を行ったら必ず評価結果を昇給、あるいは賞与に反映しなければならない」とおっしゃり、「評価→賃金」のセットで考えています。

 実際、評価結果を賃金に反映することは当然のごとく行われてきました。人事評価制度がある会社であれば、賃金制度のルールとして実践されていることです。しかし、前回の成果主義の話を思い出してください。「良いもの」「常識」と思い込んでいる制度にこそ、落とし穴があるのです。

 そこまで書くと、「山元さんのクライアント企業の賃金は評価を反映していないのか?」と突っ込まれそうですが、もちろん、大半の会社で反映はしています。私がお伝えしたいのは、賃金に評価を反映すること自体が間違いというのではありません。「評価→賃金」という考え方は、人事評価制度の本来の目的、ゴールを誤認してしまっているということを声を大にして言いたいのです。つまり、賃金に反映するために人事評価制度を使うことありきが間違っているのです。

 では「賃金の反映」は本来、どのように位置づけるべきなのでしょうか。

 それは、「経営目標の達成」のためのプロセスのひとつ、いわば手段に過ぎないということです。敢えて強調するために言うと、もし経営目標を達成する目的のために、賃金を反映することが逆効果であるなら、むしろ実施すべきではありません。

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山元浩二 [日本人事経営研究室(株)代表取締役]

1966年、福岡県飯塚市生まれ。日本で随一の人事評価制度運用支援コンサルタント。日本社会を疲弊させた成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。 導入先では社員の評価納得度が9割を超えるなど、経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。その圧倒的な運用実績を頼りに、人材育成 や組織づくりに失敗した企業からオファーが殺到するようになる。地元福岡で2001年に創業、2013年には東京に本社を移転し、全国的にもめずらしい人事評価制度専門コンサルタントとしてオンリーワンの地位を築く。業界平均3倍超の生産性を誇る自社組織は、創業以来、増収を果たす。2013年11月『小さな会社はリーダーを人事評価制度で育てなさい!』を発刊。代表著書に累計20刷のロングセラーを誇る『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』(KADOKAWA/中経出版)などがある。日本人事経営研究室(株)HPはこちら


実録・底上げ人材育成術

日本企業の99%は中小企業で、従業員の7割は中小企業で働くビジネスマン。実は中小企業こそ日本経済の「マジョリティー」なのである。そんな中で人材マネジメントについて注目してみると、大企業オリジンの手法が中心で、必ずしも現状にマッチしていない。たとえば近年アメリカ型のマネジメントから派生した成果主義に対する考え方、「360度評価」等の新しい手法は、社員数が3ケタにも行かない中小企業では通用しないことが多いというのが、独立前を含め18年、300数十社の中小企業を見てきた筆者の持論だ。本連載では、ビジネススクールや経営コンサルタントが言いがちな「定説」を覆し、山元氏の豊富な経験と取り組み事例を元に独自の視点で中小企業の人材育成を語る。

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