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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

総需要・総供給モデルによる復興過程の分析

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第9回】 2011年4月11日
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 復興過程の経済的な変動を、マクロ経済学の標準的なモデルである「IS-LMモデル」と「総需要・総供給モデル」を使って述べると、つぎのようになる(注1)

 IS曲線とは、財・サービス市場の均衡を表す曲線だ。政府の支出を所与としたとき、金利が下落した場合に均衡が達成されるためには、所得が低下しなければならない。なぜなら、金利が下落すると投資が増えるので、財市場での均衡のために、貯蓄=所得(1-消費性向)が増える必要があり、そのためには所得が増える必要があるからだ。したがって、縦軸に金利(i)、横軸に産出量(所得)水準(Y)をとった図において、IS曲線は右下がりの曲線になる(図1-a)

 LM曲線は、資産市場の均衡を表している。名目貨幣供給量と物価水準を所与としたとき、所得が増加した場合に均衡が達成されるためには、金利が上昇しなければならない。なぜなら、所得が上昇すると貨幣に対する取引需要が増加するため、一定の名目貨幣供給量の下では、金利が上昇して貨幣に対する資産的需要を抑える必要があるからだ。したがって、縦軸に金利、横軸に産出量(所得)水準をとった図において、LM曲線は右上がりの曲線になる(図1-a)

 IS曲線とLM曲線の交点E0は、財・サービス市場と資産市場のいずれにおいても均衡が成立する金利と産出量の組み合わせを示している。

 総需要曲線は、縦軸に物価水準(p)、横軸に産出量(Y)をとって、IS曲線とLM曲線の交点の軌跡を示したものである。名目貨幣供給量や外生的な支出が一定のとき、物価が下落すると実質貨幣残高が増加して産出量が増加する(この効果は、「実質残高効果」Real balance effectと呼ばれる)。したがって、総需要曲線は右下がりになる。図1-bでは、ADやAD'として示されている。

 総供給曲線は、物価に反応して供給量がどのように変化するかを示している。「フィリップス曲線」として知られている関係は、賃金が上昇すると供給が増えることを示している。賃金と物価は比例的な関係にあると考えられるので、総供給曲線は右上がりになる。ただし、電力制約のようなボトルネックがあると、ある一定水準(Ys)以上に産出量が増えることはなく、総供給曲線はその産出量水準で垂直になる。図1-bのASは、そのような場合を示している。

(注1)IS-LMモデルの簡単な説明は、つぎを参照。
野口悠紀雄、『日本を破滅から救うための経済学』(第2章)、ダイヤモンド社、2010年。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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