先日行われた日米首脳会談では、両国間の経済問題は先送りのかたちとなった。では「トランプノミクス」を、どう評価したらよいのか。社会人でも読みこなせる大学の経済学部レベルの教科書をベースに、トランプノミクスを分析してみると、「ドル高」の帰趨がその成否を握っていることが見えてくる。(「週刊ダイヤモンド」編集委員 原 英次郎)

社会人でも読みこなせる大学の経済学部レベルの教科書をベースに、トランプノミクスを分析してみる Photo:AP/アフロ

 先日行われた日米首脳会談は、両国間の経済問題はペンス副大統領と麻生副総理兼財務大臣による日米経済対話に委ねられることになった。

 これから本格化する交渉の前提として、トランプ政権の経済政策である「トランプノミクス」を、どう評価したらよいのか。トランプ氏当選直後から、事前の予想に反して、日米の株価はトランプノミクスを囃して大きく上昇した。果たしてそれは妥当な評価なのか。そこで、ここでは筆者も含め社会人でも読みこなせる大学の経済学部レベルの教科書をベースに、トランプノミクスを分析してみる。

 教科書で解説されている経済理論は、現実をあまりにも単純化した前提の上に成り立っているという批判もあるが、先人たちが営々と積み上げきた知の蓄積でもある。そこからは将来を考える上で、多くの示唆が得られるはずだ。ここではノーベル賞学者ジョセフ・スティグリッツ氏が著わし、経済学部向け教科書として定評のある『マクロ経済学(第4版)』(東洋経済新報社)を参考にした。

変動相場制下における
拡張的財政政策の効果は小さい

 まず、トランプノミクスの柱をおさらいしよう。トランプ政権の最重要課題は「雇用第一」で、(1)大幅減税とインフラ投資=拡張的財政政策、(2)保護主義的な通商(貿易)政策、(3)移民の制限、(4)規制緩和の4本柱から成り立っている。