「いや、あれはあのー、いろいろな総合的な判断で……」。岩田功・三陽商会社長は言いにくそうにしながらも、本誌直撃取材でとある計画の再開を口にした。
その計画とは、本社新別館ビルの建設である。2015年6月末に英バーバリー社とのライセンス契約が終了してからというもの、三陽商会の業績は大きく低迷している。中期5カ年経営計画の取り下げも余儀なくされた同社は、新経営計画の「目指す方向性」を公表した昨年10月、同年2月に発表した新別館の建設を一時凍結すると表明していた。
凍結は本当に“一時的”なものだったようだ。三陽商会は東京都千代田区にオフィスを賃借し、現在約400人を収容している。これら人員を新築する新別館に集約すれば、本社との連携が取りやすく、先々を考えても借りるより得と考えたもよう。売却を選択肢の一つとする青山ビル(東京都港区)を手離せば、「新別館を約25億円で建ててもお釣りがくる」といった思惑もあるとされる。
しかし昨年末には249人が希望退職で三陽商会を後にしている。16年12月期の業績も同社の見込み以上に悪かった。売上高は前年同期比30.6%減の676億円に沈み、最終赤字は過去最大の113億円だ。社内からは、「もともと希望退職者は249人程度じゃ足りなかった。もっと大規模に行っていれば、千代田区のオフィス自体いらなくなったのでは」と、新別館建設を素直に喜べない複雑な思いが漏れ伝わる。