経団連ルールは形骸化
売り手市場の「明るい就活」

 経団連加盟企業がルールを忠実に守った場合、3月1日(水)に会社説明会が解禁される。現在の大学3年生世代の就職活動の正式スタートだ。

 もっとも、学生に人気のある企業の多くは、昨年夏頃からすでに学生インターンの受け入れを通じて、事実上の選考活動を進めている。ある一流大学生の息子さんを持つ親に聞いた話では、息子さんは志望企業の一つに、まずエントリーシート的書類を書き、次に簡単な筆記試験を受け、さらに複数の学生によるグループディスカッションを経て、1日間のインターンの受け入れを許可されたのだという。

 これは、全く普通の選考プロセスではないか。つまり、インターンとして受け入れる学生を選別する名目で、説明会解禁日の遙か前から、実質的な採用活動は始まっていたのだ。ルールはすでに形骸化している。

 概ね順調な企業業績に加えて、人手不足傾向がハッキリしてきたことで、昨年と同様に今年も、傾向として学生側の立場が強い「売り手市場」の就職・採用戦線だ。企業の側では、良い人材を確保するためには早めに動く必要がある。経団連の協定など無視して早期の人材確保に動く方が、「株主利益のための正しい経営」というものだろう。もともと採用に対する意識の高い会社は、経団連の就職協定を大っぴらに無視していたが、それがむしろ正しい姿だ。

 学生からは、実質的な就職・採用活動が協定の存在によって、かえって見えづらくなっている。経団連は採用活動に関する協定を、そろそろ「正式に止めた」と宣言すべきではないだろうか。

 採用は一括でなく通年でいいだろうし、両者の併用的なものでもいい。また、いわゆる青田買いも、企業単位で考えて勝手にやればいい。優秀な学生の採用に熱心なことで知られる、ある経営者の言によると、「青田買いによる選考は『やや精度が落ちる』が、それでも優秀な子は優秀なので何としてでも採用したい」とのことだ。

 傾向として学生有利の「売り手市場」ではあっても、学生から見た人気企業にあっては、競争力の高い学生が集中するので、それなりに狭き門であることに大きな変化はない。