トランプ大統領の初の議会演説は、具体的な内容には乏しかったものの、失点もなく、市場は好感した Photo:REUTERS/アフロ

 トランプ米大統領による初の議会演説が2月28日の夜(米国時間)に行われた。市場は演説を好感して翌日のニューヨークダウは上昇し、初の2万1000ドル超えとなった。

 演説の中身は、インフラ投資や減税といったこれまでの主張が盛られたものの、財源などの具体的な内容はなく、新味には乏しかった。にもかかわらず、議会演説であらためて言及されたことで「市場の期待をつなぐのには十分だった」(石原哲夫・米国みずほ証券マクロストラテジスト)と受け止められている。

 いつもの罵詈雑言を控え、ネクタイもよく着ける赤ではなく紺と白のストライプという落ち着いた色調のものにした。これまで“行儀の悪さ”が目立っていただけに、普通に振る舞うだけで評価が高くなったといえなくもないが、辛口の「ニューヨーク・タイムズ」紙でさえ、「原稿をきちんと読んだ。落ち着いて真面目だった」と一定の評価をした。

 今後、予算教書演説に加え、債務上限の引き上げ期限を迎える。そのため、大統領と予算権限を握る議会との協調は不可欠であり、トランプ大統領もそれを意識せざるを得なかった面もあるだろう。

 日本の市場関係者が警戒していたのは、演説への失望またはトランプ大統領の為替相場への言及からリスクオフ(円などの比較的安全な資産を選ぶ投資行動)となり、円高が進む流れだった。しかし、市場は演説を好感し、むしろ円の対ドルレートは1ドル=114円台へと円安に振れた。