堀北真希の突然の引退発表に驚いた人も多いのではないかと思うが、この人気女優の引退劇は、森友学園問題以上に安倍政権に打撃を与えるかもしれない。キーワードは「女性活躍推進」である。というのは、女性活躍推進政策が安倍政権の目下の最大課題でもある「働き方改革」とも密接に関連するからだ。安倍政権にとっては、憲法改正と並ぶ重要課題であるといっても過言ではない。その要点はご存じのとおり、働く女性を支援するというもので、そのなかでも女性にとって最大のライフイベントともいえる出産・育児と仕事の両立は最重要課題だ。
大企業にお勤めの方なら肌で感じていると思うが、この課題解決のために政府は企業に対してかなりプレッシャーをかけ、産休・育休制度の拡充を含めた企業の取り組み推進を加速させている。働き方改革も、この女性活躍推進政策の延長線上にあるものだと思っている。とくに、働き方改革のポイントとされているのは長時間労働の是正、つまり残業削減だが、そのことで最も恩恵を受けるのは子育て中のワーキングママだからだ。もちろん、働き方改革の目的はそれだけではないだろうが、ともあれ官民挙げて働く女性を支援し、出産・育児と仕事の両立が可能な社会を作ろうとしている。その流れのなかで、人気女優が「家族を守るために仕事を辞める」とアナウンスした。これは安倍政権にとっては大きな痛手だといえる。
なぜなら、働き方改革や女性活躍推進は人の価値観やライフスタイルに関するものであり、それに対する芸能人やアスリートなどの人気スターの影響力は大きいからだ。とくに、若者はその時代のスターの価値観、生き方、ファッションに大きな影響を受ける。
頭ひとつ抜きんでた
堀北真希という存在
彼女の引退の理由についてはいろいろと取り沙汰されているが、公式サイトでの本人の弁では、「家族の幸せを全力で守るため」と述べている。もちろん、世の中には仕事と家庭を両立させている女性もいれば、専業主婦として家庭を守る女性もいる。いずれも個人の価値観であり、どちらの道を幸せだと感じ、どちらの道を選ぼうと自由である。しかし、堀北真希はスターである。しかも、たんなる人気女優ではない。多くの映画業界人も認める、実力派の女優でもある。つまり、将来の大女優候補でもあったのだ。
彼女は1988年生まれ。この88年生まれは奇跡の世代ともいわれ、芸能界、スポーツ界に多くの逸材が生み出されている。スポーツ界では、浅田舞、田中将大、福原愛など。芸能界ではとくに女性陣に層が厚く、女優では新垣結衣、吉高由里子、戸田恵梨香、榮倉奈々、黒木メイサをはじめ、「東京タラレバ娘」で女優として再評価された大島優子、ドSキャラを演じさせれば当代一の菜々緒、モデル・タレント系では佐々木希、鈴木奈々などなど。ビジネス界や社会セクターではまだ頭角を現している人材は少ないが、実は将来を期待できる有望な女性起業家や女性の社会起業家予備軍がこの世代にゴロゴロしている。まさにきら星のごとく、有望人材が豊富な世代だといえるが、そのなかでも堀北真希は頭ひとつ抜きん出る存在だった。