「本業の強みを活かした」チャリティーは、
なぜ可能だったのか

 各国のグルーポンの活動と併せ、約4億円の寄付を行った。「史上最も早く成長を遂げつつある企業」と賞賛されているとしても、米国でグルーポンが設立されたのはわずか2年と半年前。グルーポン・ジャパンに至っては、設立されてから1年にも満たないのだ。

 瀬戸や徐と話していて最も印象的だったのが、「本来の事業を通じてチャリティーに取り組んでいる」という彼等の感覚だった。実は、このグルーポンの取り組みは偶然ではなかった。あまり知られていないが、彼らのビジネスの原点は「マーケティングを革新する」というものであり、それはある社会的アクションのためのキャンペーンサイトから始まったのだ。

グルーポンの創業者が夢見たものは何か
社会企業としての原点を持つ最強のベンチャー

 グルーポン・ジャパンは、言わずと知れたソーシャルクーポン戦線の先頭を走る企業だ。昨年の6月に設立され、インターネットを活用した「ソーシャルクーポン」を使って怒涛の商戦を繰り広げていく。このインターネット・ベンチャーは驚くべき進化をいまも成し遂げているところであり、グーグルやフェイスブックと並ぶベンチャー企業として歴史に名を残すだろうと言う人もいる。

 だが、その背景を知る人はあまりにも少ないように思う。実は、グルーポンという発想は「the point」と呼ばれる社会的アクションの為のキャンペーンサイトとして生まれた。すでにこの中に、ウェブサイトを使ったマッチングギフトというアイデアが埋めこまれていたのだ。たとえば、ボランティアが100人集まったら、そして寄付が100万円集まったら、それに応じて、金額の上乗せや製品の提供が行われ、個人単位のアクションが増幅されていく仕組みだった。グルーポンのマッチングギフトやソーシャルクーポンと同じように、一定の人数の人々が特定の行動を起こせば、それに併せて何らかの特典が生まれるのだ。

 ソーシャルクーポンという発想の原形はむしろ、この「the point」にあった。グルーポンは資本主義市場に適応し、より早く進化を遂げただけだったのだ。

震災が明らかにしたグルーポンの「素顔」<br />――台頭する「寄付プラットフォーム」が拓く新たな可能性【前編】グルーポン米国本社のホームページ。「非営利サイトとしての誕生」の歴史が掲げられている。
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