任天堂スイッチのインターフェースが意外にも保守的な理由発売日の3月3日には待ちわびたファンが家電量販店前に行列を作った。写真はビックカメラ池袋本店にて Photo:Rodrigo Reyes Marin/Aflo

順調な滑り出し

 3月3日に任天堂から家庭用ゲーム機の新製品「Switch」(スイッチ)が発売された。3月中の出荷台数は全世界で200万台で、おそらくはその大半を売り切るはずである。株価も3日の終値は前日(2万2875円)より大幅な上昇(2万3710円)となり、まずますのスタートといえるだろう。

 しかし、ゲーム産業の国内市場規模を見ると、2016年の家庭用ゲームソフトの市場は「ポケットモンスター サン・ムーン」の発売などもあったが2994.8億円(ファミ通調べ)と、全盛期の1996~7年の半分以下となっている。一方のスマホゲームの市場規模は伸びるペースこそ鈍化したものの、9000億円~1兆円程度。世界での趨勢も似たようなものだ。拙著『日本デジタルゲーム産業史』ではゲーム産業の現在を「市場間競争」と述べたが、家庭用ゲーム市場の現状からすると「すでに時代的使命を終えた」という意見が出てもおかしくないぐらいの逆境である。

 そういった中で発売されたスイッチが、ゲーム産業で果たそうとしている役割は何だろうか。

どんなユーザー層が購入するのか

 スマホがあればゲームができる今の時代に、わざわざゲーム専用機を買う人はどういう人だろうか。それは(1)スマホゲームでは飽き足らない層と、(2)スマホゲームで遊べない層であり、端的に言えばマニア層と、親からスマホを買ってもらえない小中学生である。加えて、(3)家族や友人とわいわい遊ぶパーティ層も少なからずいるだろう。この中でも、新機種の発売日にわざわざ購入する人たちの多くは、マニア層と言っていいだろう。

 スマホゲームにも弱点はある。タッチスクリーンを指で操作するという形式をとっており、コントローラーのようにスティックもボタンもないため、遊べるゲームのタイプを規定してしまうのだ。画面内に仮想コントローラーを用意することで家庭用ゲームとよく似た操作系を実現しているゲームもあるが、物理的なコントローラーと比べると繊細な操作は難しいし、捜査中は手で画面が隠れてしまうという難点もある。家庭用ゲームの定番ジャンルである、フィールドを探索するRPGや繊細な操作で敵の攻撃を避けるアクションゲームなどは、物理的なコントローラーを持つ家庭用ゲーム機で遊ぶ方がずっと快適だ。

 また、スマホゲームは電車での移動時間などの隙間時間で遊びやすいよう、比較的短時間で遊べるステージを繰り返すタイプのゲームが多い。長いステージをじっくり遊ぶようなゲームは、家庭用ゲーム機やPCゲームの方が豊富だし、遊びやすい。

 これまで、(1)のマニア層向けのゲーム機はソニーが強く、任天堂はどちらかというと(2)の子ども向け、および(3)ファミリー向けに訴求するゲーム機という位置づけになることが多かった。それは、スーパーマリオシリーズやマリオカート、スプラトゥーンといった、任天堂が開発しているゲームのラインナップ上の特性もさることながら、任天堂のゲーム機が独創的なインターフェースを採用してきたことが大きい。

 しかし、筆者が今回のスイッチを触ってみて感じたのは、「いい意味で普通のゲーム機」という印象である。