今までと同じ課題において
AIの進化はさらに加速する

── 一次から三次まで潮流が変わってきたと感じたのはどんなときでしたか?

 私は内輪の人間としてずっとこの仕事に携わってきたので、潮流の変わり目をはっきりと感じたことはありません。すべて時と共に段階的に粛々と進歩していると思います。

 ただ、消費者の視点から見ると「AIが何かを達成した」という「しきい値」があるのだと思います。私たちもそれを認識しています。例えば音声認識は、研究者からすれば毎年、着実に数%ずつ向上していると評価ができますが、それを使っているユーザーにすれば「音声認識なんてすごく不快なものだ、使っても不便な思いをする」という評価から突然、「あ、便利かもしれない」と、飛躍的な評価の変化があると思います。

 その意味では、AIについて、確かにこの2~3年の急速な進展はとてもエキサイティングなものだったとマスメディアやユーザーと同様に評価しています。AIが進化するスピードが急劇に速まっているのは事実です。

 端的な事例は、「アルファ碁」が人間の世界チャンピオンに勝つまでの開発にかかった工数と時間が、かつてチェスでコンピュータが人間に勝つまでのそれよりも圧倒的に短かったということです。

 碁の方がチェスよりも複雑なのですが、チェスのコンピュータプログラムはアルファ碁の開発にかけた労力の10~20倍だったと思います。

──AIの進化は、今後はもっと短期的に感じるようになるのですか?

 何の問題を解くかという問題の内容によってペースは変わってきます。一般論としては今まで取り組んできた問題を深化させて解決していくペースは加速すると思いますが、どこに限界があるのかはどんどん試してみないと分かりません。ただ今までの取り組みと同じ内容であれば確実に加速して進化していきます。

──AIが取り組んでいる領域はすでに多岐にわたっていると思いますが、未開拓の領域はまだ沢山あるのですか?

 一つの例を挙げればロボットがあります。ロボットは工場での組み立て・製造作業など、人間の反復的な仕事が中心で、その領域を出ていないと思います。

 それから、たとえば検索や命令をする際に、機械に向かって音声で対話して答えさせるグーグル音声検索や米アップルの「Siri」、ソフトバンクの「ペッパー」等がありますが、時にとんでもない結果が出てくることがあり、うまく認識してもらえる命令とそうでないものがまだたくさん残っています。