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「週刊文春」編集長の仕事術
【第6回】 2017年3月15日
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新谷学

仕事ができる人に共通する「小さな習慣」

つねに世間を賑わせている「週刊文春」。その現役編集長が初めて本を著し、早くも増刷が決まるなど話題となっている。『「週刊文春」編集長の仕事術』(新谷学/ダイヤモンド社)だ。本連載では、本書の読みどころをお届けする。
(編集:竹村俊介、写真:加瀬健太郎)

すごい人ほど社交辞令で終わらせない

 日々いろいろな世界のキーマンとお会いするが、そういったすごい人には共通点がある。普通の人は「今度飯行きましょう」とか「また改めて」というセリフを社交辞令として言いがちだ。しかし、私が尊敬するすごい人たちは、社交辞令で終わらせない。「やりましょう」と言ったら、すぐ「じゃあ、いつやろうか?」と日程調整に入るのだ。

新谷学(しんたに・まなぶ)
1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

 すごい人ほど、動きは速い。これは名前を出せないのだが、某有名企業の会長と霞が関の官僚数人で食事をしていた。そのとき私と旧知の政治家のことが話題にのぼり、「一回、この会に彼も呼びましょう」ということになった。

 会はお開きになり、「今日はごちそうさまでした」と言って別れ、帰りの車の中でその会長に御礼のショートメールを送ると、いきなり「(政治家の)◯◯さんの件ですが、この日程だったら、すぐ調整できます」と返事が飛んできた。これには驚いた。私は慌てて、翌日その政治家に電話をかけて、日程を調整した。

 このスピード感には感動した。大組織のトップになってもアクセスは速く、フットワークは軽い。

 こんなこともあった。マスコミ関係の会合で、ある団体の幹部にお会いした。初対面だったため話すことも特に思いつかない。どうしようかと考えて思い出したのが、その団体とは因縁のある「革マル派」に関する事件だった。

 週刊文春は昔、「JR東日本に革マルが巣くっている」と報じた。当時キヨスクでは週刊文春を10万部以上売っていた。ところが、記事の影響で週刊文春だけ売ってもらえないという事態になったのだ。結果的に写真を間違えたり事実確認が甘かったりして、文藝春秋は全面降伏した。そのことを私は話題にし、「この件は、本当に今でも悔しいし、いつか絶対やり返したいと思ってるんです」と言った。するとその幹部は「そうですか。では、また改めてお話ししましょう」と答えたが、そのときは簡単なやりとりで終わった。

 数日後、その幹部から直接私に電話がかかって来た。「先日の件ですけど、いつなら会えますか?」といきなり言う。後日お会いすると、資料をもとにみっちりレクチャーしてくれた。ちなみにこの件はその後、当時週刊文春の記者だった西岡研介氏が担当して記事になり、西岡氏はそれをもとに『マングローブ』(講談社)という本を著した。

 社交辞令で終わらせない。これは、仕事ができる人の特徴だ。何よりスピードがすごい。「◯◯さん、今度紹介してくださいよ」「いいよ」と言って、その場で電話をかける。「今、俺の目の前に文春の新谷さんって人がいるんだけど、ちょっと今度会ってやってよ。電話代わるから」といきなり電話を渡されるのだ。

 私もデスクや現場から「人を紹介してもらえませんか」と言われたら、なるべくその場で電話をかける。スピード感が大切なのだ。「どうしようかな」とウジウジ寝かせていたらネタは腐ってしまう。

「肩書き」で人と付き合わない

 もうひとつすごい人に共通するのが「肩書きで人と付き合わない」ということだ。

 私は、ある組織の広報課長のポストにいつも注目している。その組織の中では歴代、とりわけ優秀な人物が就くポストだ。その中の何人かは今も大変お世話になっているため、組織名は出せない。

 広報課長だから、様々なメディアと日常的に付き合うわけだが、興味深いのは、肩書きが外れた「後」だ。あくまで広報課長の職務として記者と付き合うのか、あるいは一対一の人間同士として関係を結ぶのか、そこに歴然とした差が出る。これを定点観測してみると、我々の仕事にとっても大いに参考になる。

 初めて挨拶をかわした後、たいてい一度は会食をする。まずその場で話が弾むかどうか。お互いの出身や経歴から趣味、家庭の話まで、気持ちよく率直に語り合えると感じた人とは携帯電話の番号を教え合い、情報交換をするようになる。年賀状などを送り、自宅住所もお互い把握する関係となる。それぞれ部下を連れて会合を持つこともあるが、基本的にはサシでじっくりと付き合う。こういう相手には、こちらからも「広報課長」の肩書きが外れた後も末長いお付き合いをお願いしている。

 振り返ってみると、付き合いが長く続く相手に共通するのは、お互い立場は違うが、「何のために働くのか」について共感できるという点だ。ネタ元というよりも生涯の友と願う人も多い。逆に、いかにも「仕事として関係を持っています」という他人行儀なタイプの人とは、付き合いが深まることはない。肩書きが外れた後には没交渉となってしまう。

 おもしろいのは、肩書きが外れても人間同士の関係を維持するタイプの人の方が、その組織の中で圧倒的に出世しているということである。

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新谷学

1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

 


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