新聞でも報道されていますが、この大型連休の間も、政府内では福島原発事故の被害者に対する損害賠償(補償)のスキームに関する検討が行なわれていました。政府は連休明けの5月10日の閣議決定を狙っていますが、漏れ伝わってくる政府や与党内での議論を聞いていると、本当に腹立たしくなります。
政府の責任も追求されるべき
損害賠償スキームの基本的な内容は、新聞で報道されている内容のとおりです。すなわち、
1.東京電力が損害賠償の責任を一義的に負う
2.電力の安定供給に支障が生じないよう(=株式上場を維持して社債にも影響が生じないよう)賠償のための新たな機構を設立する
3.そこに全電力会社から資金を拠出させ、政府も交付国債を発行し、巨額の賠償にも東電が耐え得るようにする
4.東京電力は毎年の利益から機構に賠償金額を返済していく
5.賠償負担の減資を捻出するため、電力料金を東電は大幅に、また他の電力会社もある程度上げる
という形になっています。
このスキームにはそもそも市場のルールという観点から、
● 発表されている東電のリストラ策ではまったく不十分
● 本来は株式については100%減資、社債などの金融債権もある程度のカットが行なわれるべき
● 被害者への賠償や福島原発への対応で東京電力が債務超過に陥る場合、機構を通じて資本注入するよりも一時国有化すべき(資本注入は過少資本、すなわち債務超過に陥っていない場合に限定すべき)
といった問題があるのですが、それに加えて看過してはいけないのは、政府の責任が曖昧になっているということです。
このスキームでは、東電が賠償の一義的な責任を負い、政府は賠償が円滑に進むよう支援するような役割になっていますが、それでいいのでしょうか。種々の規制の存在や毎年投入される多額の予算などを勘案すると、原子力発電は事実上、電力会社と政府が一体的に経営してきたとも言えます。
その観点からは、今回の原発事故について東電の責任がもっとも重いのは当然ですが、同時に政府、具体的には原子力安全・保安院や原子力安全委員会の責任も重いし、もっと追求されて然るべきではないでしょうか。