シリーズ105万部突破の大ベストセラー『伝え方が9割』の著者で、先ごろ発売された『まんがでわかる伝え方が9割』も好評の佐々木圭一さんと、脳科学者で著書も多数、近著の『サイコパス』が話題となっている中野信子さんの対談が実現。「子どもの頃に、コミュニケーションについて悩んだ」という共通経験から盛り上がり、お互いの書籍の話、脳の話と話は多岐に渡りました。
(構成/伊藤理子 撮影/小原孝博)
伝え方が下手なのは、脳のせいだと思っていた
佐々木 中野さんとは以前一度、対談させていただいたことがありますね。あれは確か…。
中野 広告のイベントでしたよね。
脳科学者。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員教授。1975年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『脳内麻薬
人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)ほか。
佐々木 そうでした!面白かったですね。もともとぼくは中野さんの大ファンで、いろいろ聞きたいことがあったから、その場でガンガン聞いてしまったという。
中野 いやいやいや、佐々木さんこそ、おそろしく売れた“お化け本”の著者ですから。『まんがでわかる~』を読ませていただきましたが、わかりやすい『伝え方が9割』がさらにわかりやすく表現されていて、驚きました。
佐々木 読んでくださったのですね、ありがとうございます。
中野 この本、小学生の時に読みたかったですね。伝え方について悩んでいて、「自分の脳のせいだ」と思っていましたから。
佐々木 伝え方が悪いのは、脳のせいであると?
中野 そうです。みんなは自然に身につけていっているのに、自分が身につけられないのは、脳のどこかがおかしいんだ…と。それで脳のことを勉強しようと思ったという経緯がありまして。でも、小学生の時にこの本に出会っていたら、脳科学者にはなっていなかったわけですけれど(笑)。
佐々木 すごいですね、それ(笑)。
中野 ぜひ学校で、こういうことを教えていただきたいなと思います。いま、「非認知スキル」がすごく話題になっていて…。
佐々木 非認知スキル?
中野 はい。「認知」というのは、物事を捉えて脳で処理するという意味で、教育の現場では、例えばフラッシュカードを使って計算力を上げるとか、記憶力を上げるなど、認知スキルの向上に力を入れる傾向がありました。しかし、最近では認知を鍛えるのは少し時代遅れであるという認識が高まっています。
佐々木 なるほど。
中野 今の時代に必要なのは、協調性を持って人とうまくコミュニケーションを取る、相手の話を聞き共感する、相手が困っているなと察知して手を差し伸べる、善悪の判断をしたうえで主張できる、などといった「非認知スキル」こそが、子どもの将来に役立つのではないかと言われています。
佐々木 確かに、そうかもしれませんね。