半径5mくらいのことしか
興味がない人々へ

──その、50年前のコンピュータを見て今のコンピュータまでを想像するというように、時間軸をもってものを見るって大事ですね。他にも私は以前、成毛さんが絶滅した動物の化石標本を見て「これ、うまそう」って言ったという話に感心したんですが、要するに「これに肉がついたらこんな動物になって、当時の人は食ってたかもしれない」って想像しながらものを見るということですよね。見方次第で楽しみ方は全然違ってくるという好例です。その辺は、子どもたちに見せる時にうまく伝えられるといいですね。

 そうですね。ビジネスマンでも企画力とか商品開発力とかがなかったり、新規事業を起こすといったことができない人たちに共通した傾向に、「自分の半径5mくらいのことしか興味がない」というのがあると思っているんです。

 5mか、遠くても50mで、そこから先に行っちゃうと本当に興味がない。目の前にあるパソコンか、せいぜい社内の人だけ見てるとか、そういうオジサンっているでしょ。

 一方でさっきのイーロン・マスクなんかは、完全に地球規模でものを考えている。少なくとも直径7000kmまでのイメージがあって、次は宇宙に行くから3万6000km先までもう見えてます、みたいな感じになってる。

 それから、その「時間軸」というのも確かに大事で、オットー・ビスマルク(ドイツの宰相)の「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」っていうの言葉がありますね。実際はビスマルクは別の意味で言ったらしいけど、それは措くとして、確かにダメな人って自分の体験だけで語ります。

 この間もある対談で「スマホはもうそろそろダメになるんじゃないか」なんて話してる人がいた。いや、スマホってまだ出てきて10年ですよ。初代iPhoneから10年でここまで来たんだから次の10年後のスマホは、なくなるどころか、もっととんでもないものに変化している可能性の方が高い。その人のスマホ観はiPhone6が7になったけどあまり変化がなかった、みたいな、たかだか1年しか見てないわけですよ。10年前はガラケーしかなかったのを忘れてる。頭の中の「時間容量」がないんだね。

 その点、科博では、とりあえず35億年前からというものすごい長いスパンで見られるじゃないですか。ビジネスマンは、脳の中に時間軸を広く持ってると、必ず役に立ちますよ。

──ありがとうございました。

なるけ・まこと/書評サイト「HONZ」代表。北海道札幌西高等学校を経て、1979年中央大学商学部卒業。アスキーなどを経て1986年にマイクロソフト株式会社入社。1991年よりマイクロソフト社長。2000年に退社後、同年5月に投資コンサルティング会社インスパイアを設立。翌年、書評サイト「HONZ」開設。近著に『AI時代の人生戦略「STEAM」が最強の武器である』(SB新書)、『国立科学博物館のひみつ』(ブックマン社)など。