未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『コピーキャット~賢い企業はいかに模造品を使って戦略的優位性を手にするのか~』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー

商品そのままではなく、ビジネスモデルや
マーケティングを模倣する企業戦略

 少し前に中国のある遊園地が、「ディズニーランドは遠すぎる」というキャッチコピーをうたい文句に、世界的に有名なアニメキャラクターなどに酷似したマスコットを使って大盛況という話題がありました。皆さんも、同様のお話をお聞きになったり、実際にそういったコピー商品を見たことがある方も少なくないと思います。通常の世界的な著作権などの観点からいくと、こういったコピー商品というのは大きな問題です。「フェアユース」といって、柔軟な考え方もある一方で、こういった問題は後を絶ちません。

 本書の著者であるオーデッド・シェンカーは、オハイオ州立大学フィッシャー経営学院の教授などを務めており、本書において「コピー=模造」というものを、非常に強力なビジネス戦略であると解いています。模造が強力なビジネス戦略であるという部分だけを聞いてしまうと、少しびっくりしてしまいますが、本書は米国のAmazonや各紙の書評などでも非常に評価の高いビジネス洋書です。

 実は本書で紹介している模造というのは、商品をそのままコピーするのではなく、成長している企業の商品やビジネスモデル、マーケティングを模造するというもので、イモベーション(イミテーション=模倣とイノベーション=変革を混ぜた現象という造語)で成功するための革新的な十か条を紹介するという非常に有益な経営戦略本です。

「模造」は、イノベーションよりも速く安く商品ができるうえ、低リスクで収益性が高い企業戦略です。企業の資金や時間といったリソースを他社製品のサービスや市場の研究に充て、模造する対象を選ぶことに費やし、クリエイティブな模造をすることによって、少ない労力で大きな利益を得られます。しかも、合法的に模造品を作る事が可能であるにもかかわらず、未だに多くの企業が、イノベーションを主軸とした次なるヒット商品の開発に莫大なリソースを投じていると述べています。

 そもそも、ビジネスは、ヒット商品をいかに継続して安定的にリリースしていけるかどうか?という部分が、企業の存続に大きく影響を与えます。もちろん、ここまでは多くの企業が理解し、実践していることなのですが、実際はヒット商品を生み出すイノベーションにどれだけの研究開発費と時間と労力を費やし、更にその商品がどの程度売れることで利益を確保できるかどうか予測をつけなくてはならないというという、厳しい現実が企業にはあります。

 しかし、本書のエッセンスを引用するならば、売れるかどうか分からない商品を開発するのに莫大な経営資源を投入するよりも、すでに売れている商品やビジネスモデルをコピーしたほうが圧倒的に効率が良く、市場参入と撤退のスピードが早くコストも抑えられるうえ、売れる可能性も極めて高いと言えるのです。これは何も大企業に限ったことではありません。中小企業はもちろん、起業家レベルでも同じことが言えます。

 本書では、売れるかどうか分からないまったく新しい商品、つまり、市場が理解しづらい商品よりも、すでに市場で認知されており、ある程度のニーズが掴めている市場でビジネスを行うことがもっとも的確な企業戦略であるという、非常に鋭い視点を教えてくれます。

 とはいえ競合他社の成功事例を参考にするというのは、とくに目新しいことではなく、ほとんどの企業がこういった競合他社の動きなどから、模造を意識しているというのも事実です。しかし、多くの場合、ほとんどの模造は失敗します。実は模造を成功させるためにはそれなりの導入手法を知っておく必要があるのです。

 本書は「4つの模造モデル」、そしていったい、「どこで、何を、誰を、いつ、どのように模造すべきか?」という基本的な模造戦略の具体的なテクニック、そしてイモベーションを成功させるための10ヵ条など、すぐに実践できる内容を、非常に分かりやすくまとめている良書です。

 本書を参考にすることで、あなたの会社の経営戦略にも大きな影響を与えるかもしれません。経営者の方、経営幹部、商品開発担当者、マーケティング担当者、とにかく企業規模や業種業態を問わず、多くのビジネスパーソンにぜひ読んでいただきたい、新たなアイディアを与えてくれる非常に価値ある1冊だと思います。

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