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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

震災に目を奪われてはならない
日本にはもっと深刻な債務問題がある

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第45回】 2011年5月31日
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 アメリカ合衆国の借金総額をリアルタイムで表示するUS Debt Clockがある。1秒間に何度も更新される。目が回るほどだ。借金を続ければ、金利は元本に上乗せになって雪ダルマ式に増えていく。このウェブサイトは返済しなければならない借金総額(元本と金利)を示したものだ。だが、見ていると恐怖心が湧いてくる。

 米国の借金はもともとは、ブッシュ前大統領の富裕層への大幅減税と、イラク戦争での軍事費支出で膨れ上がってきたものだ。2009年1月にオバマ大統領が誕生してまもなく、前年に発生した金融危機の後始末、ゼネラル・モーターズ(GM)の倒産等と、政府が関与せざるを得ない事件が続いた。そして同年7月には医療保険改革という最も金のかかる政策を導入した。多くの国民はこうした一連の政策を支持したが、一方で「国がこんなに借金をしても大丈夫か」といった心配も広がった。

 こうした心理は市民の自発的なティー・パーティー(茶会)運動となって展開され、反オバマ勢力となっていった。そこで2010年11月の中間選挙を迎えた。茶会を取り込んだ野党共和党は、大統領の出身母体である民主党を激しく追い上げた。上院では与党民主党が辛うじて過半数は維持したが、下院では共和党に大敗してしまった。

 この国では連邦政府の債務残高に上限が決められていて、この限度を超えて債務を増やすには、そのたびに議会の承認を取り付ける必要がある。日本を含めたほかの国では1年に一度、年度予算と一緒に債務限度を決め国会の承認を得れば、いちいち承認を得る必要がない。なぜ予算のほかに限度の設定があるのだろうか。これは行政府に注意を喚起するためであると言われる。

 現在の債務限度は2010年2月に決められた14兆2940億ドルである。ほぼ米国のGDPに匹敵する。ところが5月16日にこの限度を超えることが確実になった。下院で多数を占める共和党はこの権限を利用して、大統領に借金の削減を迫る作戦に出た。だが、国には待ったなしの支出が数多くある。公務員の給与支払い、年金の支払い、軍事費の支払い、国債の利払い等である。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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